「世界最短」国際列車消滅?シンガポール国境の今 マレーシアと結ぶ新路線建設、高速鉄道構想も

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ウッドランズからは、マレーシアを経てタイまで「メーターゲージ」と呼ばれる軌間1mの線路がつながっている。かつては国際列車運行も盛んだったが、列車を乗り継いでの3カ国巡りもそろそろできなくなりそうだ。貨物列車の運行はなく、シンガポール発の長距離列車も廃止されていることから、この「世界最短の国際列車」が消滅するのもやむなしかもしれない。

往年の「マレー鉄道」の栄華を今に伝承する豪華列車「イースタン&オリエンタル・エクスプレス(E&O=Eastern & Oriental Express)」もコロナ禍後に復活を果たし、ウッドランズ発クアラルンプール経由ペナン州行き特別列車として運行されているが、これもRTSの開業後はシンガポール領への乗り入れがなくなる見込みだ。

Eastern & Oriental Express observation car
オープンデッキの展望車もある豪華列車「イースタン&オリエンタル・エクスプレス(E&O)」(筆者撮影)

「E&O」は、欧州の豪華列車として知られるオリエント・エクスプレスの運営会社・ベルモンドが走らせている列車。編成には44室のスイートルームのほか、バー車両や展望車ラウンジがある。車内では、フレンチ・シェフが腕をふるう本格コース料理、ピアノの生演奏やサロンカーでのリフレクソロジーなどのサービスもある。

E&O バー車
「イースタン&オリエンタル・エクスプレス(E&O)」のバー車(写真:BELMOND)

高速鉄道構想「棚上げ」のその後

RTSの建設が進む中、シンガポールとクアラルンプールの間に高速鉄道(HSR)を敷設する計画もある。時速300km以上で運行し、両都市を最短45分で結ぶ構想だ。

両都市は直線距離で約300km。双方の行き来は極めて活発ながら、今のところ陸路交通での所要時間は5時間ほどかかるうえ、途中で国境検査もあるなどあまり便利でないことから、飛行機での往来が一般的だ。両都市を結ぶ区間は世界の民間航空便の中で「最も供給座席数が多い路線」となっている。

HSRプロジェクトに初めて言及があったのは2010年のことだ。その後両国政府は敷設に向けた準備を進め、それと並行してアジア域内において高速鉄道ネットワークの整備で先行する日本、中国、韓国が案件獲得のためにクアラルンプール市内でロードショーを行ったこともある。

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