「世界最短」国際列車消滅?シンガポール国境の今 マレーシアと結ぶ新路線建設、高速鉄道構想も
どちらの道路も両国間を行き来する日常の通勤に不可欠なインフラとなっているが、その重要性ゆえに、とくに休日や通勤時間帯には激しい渋滞に悩まされている。両国を行き来するには、必ずパスポートを持っての出入国検査が必要となる。この行列は絶望的に長くなることもあり、筆者も5時間以上並んでようやく通り抜けた経験もある。
その点、鉄道は所要時間が読めるとあって高い人気を誇る。マレーシア国鉄(KTM)によるシャトル・テブラウ(Tebrau)と呼ばれる国際列車は早朝から深夜まで1時間ごとに運行。2021年11月25日付記事「乗車5分、『世界最短の国際列車』はなぜ存在するか」で紹介したように、所要時間はわずか5分だ。
「国境越え通勤電車」開業に期待感
絶望的ともいえる国境の渋滞対策として、現在進行しているのが両国間をライトレールでつなぐ建設プロジェクトだ。これは高速輸送システム(RTS)リンクと呼ばれ、ジョホール・バルの市街地とシンガポール側国境に接する町・ウッドランズ(Woodlands)を結ぶ。全長は4kmで2026年の運行開始を目指している。
建設中の様子はコーズウェイを走る列車や車からも垣間見ることができるほか、ジョホール・バルの市街地のあちこちではRTS乗り入れに向けた工事が着々と進んでいる。国境を行き来する通勤客らにとっては、地下鉄や近郊電車のような利便性の高い交通機関の開業によって大幅な時間短縮が見込まれる。
ただ、RTSができることで「鉄道がなくなる」という犠牲も負わなければならない。
かつて、シンガポールを含めたマレー半島が英国領だった1932年、現在のシンガポール領内までの鉄道が開業。コーズウェイを渡って市内中心に近いタンジョンパガー(Tanjong Pagar)駅までつながっていたが、2011年をもって同駅までの区間は廃止され、現在は国境をわずかに越えたウッドランズにある乗降場までに短縮されてしまった。RTSの完成後は、現在のKTMによるシンガポール乗り入れが打ち切られるとの公算が高い。
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