高円寺「小杉湯」が原宿に進出までの紆余曲折 4月開業の東急プラザ「ハラカド」も入浴料520円

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壁には、お決まりの富士山の銭湯絵だ。

銭湯好きとして注目したのが、脱衣場にあるコート掛け。冬場はロッカーを2つぐらい使わないと、着ているものや荷物が入りきらないのだが、コート掛けのある銭湯はあまりないように思う。

もっとも、繁盛している小杉湯ではロッカーを2つ使うという贅沢はできない。必需品として備えてあるのだろう。

脱衣所
脱衣場は広め。壁には悩み相談の掲示板など、ユニークな取り組みが見てとれた(撮影:梅谷秀司)

しかしこのように、普通の銭湯の魅力で多くの客を呼び込めるようになるまで、小杉湯はさまざまな工夫を重ねてきたようだ。小杉湯の副社長、関根江里子氏によると、3代目の平松佑介氏が家業を継いだ8年前は「斜陽産業」と呼ばれていた。客入りは地元の人を中心に、土日でも600〜700名程度だったそうだ。

もっとも、それでも東京都の平均数からすると多い。高円寺、そして隣駅の阿佐ヶ谷の周辺には銭湯やサウナ施設が数カ所ある。銭湯の風俗がまだなんとか残っている土地柄なのだろう。

一般公衆浴場、いわゆる銭湯はかつて衛生的な生活の維持に欠かせない施設だった。そのため、料金は戦後以来「物価統制」を受けており、都道府県により上限が決められている。東京都は520円だ。毎日水、燃料を大量に要する銭湯において、平均的な144名の売り上げでは経営が厳しいだろうことが想像できる。

自宅の風呂が普及した現代において、生活に必須とは言えなくなった銭湯は、存続をかけて需要の喚起を模索しなければならなくなった。小杉湯では先代から、地元のヨガサークルなど、地域の集まりに営業時間外の場所を提供し始めている。

イベント要素を盛り込んだ

3代目から始めたのが、日替わり湯、物販など。「生活の一部」であった銭湯に、イベントの要素を盛り込んだのだ。

例えばユニークなのが、形が悪い等で商品にならない生産物を湯に入れる「もったいない風呂」。「みかん風呂」「酒かす風呂」などバラエティに富み、好評だったが、一方でコロナ禍、衛生面を心配する声が上がり、残念ながら現在は中断している。

物販に関しては、湯上がりの飲み物としてクラフトコーラやクラフトビール、クラフトジンなど、ちょっとこだわった商品も品揃えした。1本500円近くと、銭湯の料金とほぼ同じ価格の飲み物も売れる。

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