――今回のプロジェクトは、一般市民からはわかりづらい基幹系システムの話でもあります。
世間一般では、自分の自治体でしか住民サービスを受けないから、日本中が1個のシステムで同じような仕事をしていると思われやすいし、僕も民間にいたときはそうだった。でも、それぞれの自治体は、長い歴史の中でシステムをカスタマイズして、きめ細かいサービスを提供している。同じ地方自治の事務といえども、違う点はかなり多い。
今回の標準化では、裏側のセキュリティが強くなる、災害時に便利になる、新しい行政サービスが迅速に立ち上げられるといった意味があると思うが、急に豪華な住民票が出てくるという話でない。利用者からすると、生活が極端に変わることはなく、逆に変わったことを意識されないように(問題なく)移行できるかが大事だ。
「イチかバチか」で進めてはならない
――過去に例のない大事業なだけに、システム移行に伴うトラブルへの懸念はありますか。
いちばん大事なのは「安全第一」だ。1割の自治体が「怖い」と言っているのに、イチかバチか思い切っていこう、というタイプの仕事ではない。
自治体ごとに職員の仕事も変わり、システムは変わったけど職員が対応できなければ本末転倒だ。「これなら安全に移行できる」という状態で進めないといけない。後ろに行けば行くほど、現実的で柔軟な対応が必要だ。
――「2025年度」という期限は、コロナ禍にあった3年半前、菅政権下で急に決まりました。この期限自体に無理があったのでしょうか。
長期プロジェクトは、大規模で複雑なものが多く、それを妥当に見積もること自体が難しいし、正直やってみないとわからない。この手の話はできないところに目が行きがちだが、(コロナ後に)着実に行政のデジタル化は進み、都も含めて随分変わった。もちろん課題はあるが、コロナ以降に国のトップが「ここに行くぞ」と決断しなければ実現できなかった。
一概に、最初から国が間違っていたということは絶対ないと思う。
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