医薬品扱う専門会議は「利益相反」がゾロゾロ 自己申告を鵜呑み、ずさんなチェックの実態

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過少申告が判明した24人中8人は、議決に加われない「50万円超500万円以下」の受領だったが、「受領なし」または「50万円以下」と申告し、議決に参加していた。ほかの16人は「50万円以下」とすべきものを「受領なし」と申告していた。これに対する罰則はない。

実は、厚労省では2014年4月にも、子宮頸がんワクチンの副反応検討部会で、企業からの金銭受領に関して、委員の申告内容に数多くの誤りが見つかっている。にもかかわらず、こうした問題が再度起きただけに、委員の自己申告に頼った運用が、信頼性を欠くことは明らかだ。

厚生労働相が今後の対策を言明

6月9日の厚生労働委員会で、塩崎恭久厚労相は、「委員の申告内容を企業に確認する“裏取り”を導入する」と今後の対策を説明。年度の誤りを防止する観点から、申告様式を改訂し、規程の重要事項は、会議開催の都度、注意を喚起する方針も示した。

だが、寄付金などの申告内容そのものを見直すべき、との指摘も根強い。審議の議決に加われない「50万円超500万円以下」という現行規程だと、3年前に60万円受領していても、3年連続で500万円受け取っていても、扱いは同じとなる。薬害オンブズパースン会議の水口真寿美・事務局長は、「(審議会の)透明性や信頼性を高めるためにも、どの企業から、いつ、いくらもらったかを具体的に公開すべきだ」と唱える。

命にかかわる製品を扱うだけに、利益相反のずさんな管理は許されない。厚労省は自己申告の鵜呑みを改めるだけでなく、規程そのものの見直しも検討すべきだ。

(撮影:今井康一)

「週刊東洋経済」2015年6月27日号<22日発売>の「核心リポート02」を転載)

長谷川 愛 東洋経済 記者
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