「子どもへの医療」こそ、世の中で"最高の投資"だ カンボジアの医療に学ぶ"お金のリテラシー"

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カンボジアの医療現場での課題、ジャパンハートの国際医療ボランティア活動、そして神白先生の言葉から我々は何を学ぶことができるのだろうか。

筆者は、以下のような「3つの大切なこと」を感じることができた。

寄付・ボランティアから学べる「投資のリテラシー」

① 「個人のお金による社会参加」の大切さ

ジャパンハートの活動の原資になっているのは、寄付という個人の「お金の社会参加」だ。

一人ひとりの影響力は小さくとも、その力は確実にカンボジア医療を前に進めている。

投資や寄付など「お金を人に託す」という活動は、社会を前に進める正しい活動である、と改めて認識をした。

② 社会へ向かわせるお金に「手触り感」を持つ大切さ

「お金は稼ぐよりも使うほうが難しい」という格言があるが、それは個人の人生観がより表れるからだ。

今後の日本では「貯蓄から投資」の考えが浸透し、今までの預貯金に代わり、世界株式や世界債券のパッシブファンドを長期保有することが、より民意を得ていくだろう。

現在のパッシブファンド投資は、少額から、スマホから、手数料なしで、高度な国際分散投資が可能であり、過去から見れば大変に素晴らしい、夢のようなことが可能である。

ただし、これだけ便利になり、また投資したら「ほったらかし」が好ましくあるため、社会の応援やモニタリングという投資本来の「お金の社会参加への理解は乏しくなっていくだろう。

そのような新しい時代だからこそ、寄付などの意思を込めたアクティブなお金の社会参加を通じ、「自分が社会にお金を投じている」という手触り感を学習することが大切ではないだろうか。

③ 「若者への投資」の大切さ

カンボジアにおける医療提供の一番のボトルネックは、若者に十分な医療教育が提供できていないということだ。

また、ジャパンハートの活動は「子どもの命を救い、その未来を開く」という「若者への投資」にほかならない。

世の中には、たくさんの投資がある。「株式投資」「不動産投資」「自己投資」「設備投資」「研究開発投資」などなど。

どの投資も社会的に大切だが、子どもを含めた「若者への投資」が豊かな社会へ向けて最重要であることを改めて認識した。

「投資」と「寄付」は「利己」と「利他」という真逆のものと思われがちだが、どちらも社会へ意思をもってお金を投じるという同一の活動である。

さらに突き詰めると、投資は人や社会を豊かにするためという「利他」の概念へ、寄付・ボランティアは自分のために行う「利己」の概念に行きつく。

我々が日々の行動でできることは何だろうか?

毎月のつみたて投資額の100分の1でも1000分の1でもいいので、投資と同時に「寄付というお金の社会参加」を人生に取り入れることには、大きな意味があるだろう。

それは結果として、「個人の投資リテラシー」や「お金と社会の理解」を大きく高め、長期の資産形成を大きな成功に導くことになるだろう。

募金 ジャパンハート
医療センターの屋外廊下には募金箱が置かれていた(写真:WealthPark研究所撮影)
加藤 航介 WealthPark研究所代表/投資のエバンジェリスト

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かとう こうすけ / Kosuke Kato

WealthPark研究所代表/投資のエバンジェリスト。国内外の投資会社でファンドマネージャーなどの要職を20年経験後、人生とお金の研究・教育を行うWealthPark研究所を設立。英米で10年を過ごし、世界30カ国以上での投資調査の経験を持つ。二児の父。米国コロンビア大学MBA修了(経営学修士)。米国公認会計士、ファイナンシャル・プランナー、証券アナリスト試験に合格。一般社団法人 投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」客員研究員。渋谷教育学園渋谷中学高等学校「お金と投資の専属講師」。

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