「江ノ電」が50年前の車両も使い続けるワケ 乗客1700万人!「江ノ電」の強さの秘密①
――昔懐かしい江ノ電の風景を目当てに、訪れる人も多いようです。
たとえば極楽寺(ごくらくじ)駅は、休日ともなると多くのお客様でにぎわうのですが、駅舎はトタン葺きの小さな建物です。
最近では「最後から二番目の恋」(フジテレビ)や映画『海街diary』のロケ地として使われていましたが、この駅がこれまで何度もテレビドラマや映画の舞台となってきたのは、昔ながらの駅だからだと思うのです。もし、普通の駅舎のようにコンクリートと鉄骨の建物に建て替えてしまっていれば、これほど喜んではいただけないでしょう。
自然の中に立っている田舎の駅というのが、今の時代には、これがかえって味わいとなり、人を引き付ける要素になるわけです。
ですから、維持・管理の面からすれば不効率・高コストでも、こうした駅舎を維持し守っているのです。
古い車両も使い続けるワケ
――車両の古さも魅力になっています。
今でも半世紀前の車両が現役で走っています。先人が努力してメンテナンスを続けてきてくれたおかげで、古い車両が今なお現役で使える状態を維持してきました。その努力を無にしたくないという思いもあって、使い続けているわけです。古い車両が走ると、お客様も喜んでくださいます。
現在、305形と355形という半世紀前の車両が一編成だけ、毎日走っているのですが、わざわざそれに乗りたいと、遠方から来てくださるファンもおられます。私たちとしても、そうしたお客様の声に応えるためにも、できるかぎり長く、先人の遺産ともいうべき車両を走らせるつもりでいます。
――古い車両のメンテナンスは大変なのではないでしょうか。
なにしろ、半世紀も前の車両ですから、メーカーももう部品を作っていません。どこかに不具合が出て、部品を交換しようとしてもメーカーに在庫はないわけで、特注で作ってもらうか江ノ電が自社で製造するしかありません。
点検についても新しい車両よりも念入りに行いますし、洗車についても気を使います。
ですから、古い車両の場合、新しい車両に比べてメンテナンスの手間やコストは倍以上かかっているでしょう。
それでも、安全性に問題が出ないかぎり、こうした古き良き魅力は残していくつもりです。
――変化にとんだ軌道も、鉄道ファンにはたまりません。
江ノ電は、1902(明治35)年に軌道法の認可をいただいて路面電車としてスタートしました。戦中の特殊事情で鉄道として認可を受けた後も、路面電車の形態が残っています。現在の鉄道事業法に合わせればクリアされないのですが、特別認可の形で継承されているのです。それが江ノ電ならではの特色・魅力になっています。
先ほども申しましたように、市街地をくねくねと走ったり、自動車の道路との併用区間があって路面電車として走行することも、江ノ電独自の景観になっており、観光資源として大きな財産になっているわけです。
でも、そうした魅力のウラには、複雑な区間を安全第一に走行しようとする運転士の大きな苦労があります。
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