京王井の頭線、四季の花咲く沿線と「7色の電車」 桜咲く春や梅雨のアジサイ、稲穂実る秋の田園

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京王電鉄井の頭線は渋谷から吉祥寺まで12.7kmを結ぶ路線で、1934年の開業から今年2024年で開業90周年だ。同じ京王電鉄の路線でも、京王線の軌間は特殊な1372mmであるのに対し、井の頭線はJR在来線などと同じ1067mmである。

京王井の頭線 1900形
京王井の頭線の1900形。1953年から1984年まで活躍した。1956年公開のSF映画『宇宙人東京に現わる』にも登場している(写真提供:京王電鉄)

現在運行されている車両は1000系の単一形式で車両ファンには今一つ話題に乏しいが、井の頭線の車両は編成ごとに異なる7色のカラーリングを施した「レインボーカラー」で、色を選んで電車に乗る楽しみもある。だが、井の頭線の魅力は何といっても沿線に特徴ある駅と共に行楽地が多いことにある。ここでは長く沿線に住んだ筆者のお勧めの散歩コースといったスタンスで井の頭線を紹介したい。

井の頭線1000系 レインボー電車
1000系には、編成ごとに異なる7種のカラーリングの車両以外に、虹色のグラデーションを施したレインボーカラーの電車もある(撮影:南正時)

「谷間の駅」神泉は何の泉?

まず始発の渋谷駅に向かう、JR渋谷駅から連絡通路を経て井の頭線改札に至るが、途中のマークシティの通路にある岡本太郎の大壁画「明日の神話」はぜひ見ておきたい。

井の頭線路線図

渋谷駅を発車するとすぐ渋谷道玄坂トンネルに入る。次の神泉駅で下車すれば単線並列の馬蹄形のようなトンネルの全容が確認できる。この神泉駅も神泉トンネル内にある珍しい駅だ。このトンネルはもともと丘陵地帯を切り開いた切通しで、後に上からふたをする格好で土を盛り宅地が形成された――という話を土地の郷土史家から聞いたことがある。かつてはトンネル内のためホームが短く、5両編成のうち一部の車両の扉が開かなかったが、1997年にホームが延伸され不便は解消された。

渋谷トンネル 3000系
馬蹄形のトンネルが2つ並んだ渋谷トンネルを抜けてきた3000系=2011年11月(撮影:南正時)

「神泉」の名は、江戸時代の弘法大師のゆかりの僧侶がこの地に泉を発見して霊水とあがめられ湯治場としたことが由来だ。明治時代になると代々木に練兵場ができて神泉にも人が集まるようになり、湯治場から発展して今の円山の花街が形成された。いわば神泉は歓楽街としての渋谷の発祥の地でもあるのだ。

神泉駅 井の頭線 グリーン車
かつての神泉駅。ホームは3両分しかなく2両はドアが締切だった(写真:佐藤豊)
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