京王井の頭線、四季の花咲く沿線と「7色の電車」 桜咲く春や梅雨のアジサイ、稲穂実る秋の田園

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浴場はその後、公衆浴場として1972年まで営業を続けたが閉館し、神泉の泉も埋め立てられマンションとなった。弘法湯の3代目は現在神泉駅前でカフェを経営しており、渋谷区の郷土史家として地域の記録を撮影する写真家でもある。ちなみにカフェの名前は「ラ・フォンテーヌ」(泉)、近くにはかつての霊泉弘法湯の道の道標が残っている。そういった歴史的観点から、神泉駅は「関東の駅百選」に選ばれている。

神泉を発車した各停が神泉トンネルを出ると駒場東大前駅だ。東大駒場キャンパスと駅は隣接しており、目黒川の源流の1つである湧水池など自然も豊富だ。近くの駒場野公園には、湧水を水源とする「ケルネル田んぼ」があり、四季折々の田園風景と電車の写真が撮れる。まるで東北地方の里山の風景の中を走る風情で、筆者がよく訪れる写真散歩コースだ。線路際の道路には桜並木があり、春には地元の花見客らで賑わう。池ノ上駅は神泉、駒場東大地区の湧水池の上流にあたる。

ケルネル田んぼ 3000系
桜咲く早春のケルネル田んぼと3000系電車(撮影:南正時)
ケルネル田んぼ 梅雨
梅雨時のケルネル田んぼ。渋谷から2駅の都会とは思えない風景だ(撮影:南正時)

梅雨時の井の頭線名物「アジサイ」

渋谷から急行で最初の停車駅、下北沢駅は小田急線との接続駅。かつては井の頭線と小田急線の駅構内がつながっていたが、小田急の地下化で2019年に改札が分離された。駅は変わったが駅前は相変わらず若者の街としてにぎわっている。新代田駅は上を幹線道路の「環七通り」が走る切通しの半地下駅。東松原駅は閑静な住宅街の駅だが、近くには梅の花で知られる羽根木公園があり、梅雨時には線路脇の斜面に咲くアジサイをホームから眺めることができ、シーズン中はライトアップされる。

井の頭線 アジサイ
アジサイに囲まれて新代田―東松原間を走る電車(撮影:南正時)
アジサイ 井の頭線
車窓を彩るアジサイは乗客や沿線住民の目を楽しませる(撮影:南正時)

次は京王線と交差する乗換駅、明大前駅だ。この駅前から甲州街道を渡ったところの小公園には井の頭線を跨ぐ玉川上水水路橋があり、複線の線路に並行してさらに2線分の空間が確認できる。これは井の頭線を開業した帝都電鉄の前身、東京山手急行電鉄が計画して未成に終わった路線、通称「第二山手線」の遺構といわれている。

明大前 東京山手急行電鉄
玉川上水水路橋の下を通る井の頭線。線路の横にさらに線路2本分の空間(手前)があり、これが通称「第二山手線」の遺構だ(撮影:南正時)

永福町駅は井の頭線で唯一の待避設備がある駅で、急行と各停の接続駅になっている。橋上駅のビルの屋上には展望庭園「ふくにわ」が開放され、富士山や奥多摩の山々を背景に井の頭線の電車も遠望できる。

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