2代目ペッパー、家庭向けは"ほぼ別人"だった 衝撃の披露から試行錯誤の一年
当初、ソフトバンクは一般販売を今年2月としていた。それが6月に延期されたのは、CPUの変更に伴って、生産が当初予想していたスピードで立ち上げられなくなったからだ。2014年末の段階で、現場では旧CPUに家庭用のために開発したさまざまな機能を詰め込むべく、圧縮した処理を加えていた。
林リーダーが孫社長に状況を報告すると、孫社長はこう言った。「何としてもCPUの能力を上げろ」。
導入が検討された新CPUの処理速度は従来の4倍と高性能だが、発売予定日までに量産体制を整えるのは困難な状況だった。その結果、新CPUを搭載した「2代目ペッパー」は、2月に開発者向け限定で300台が販売され、一般発売は持ち越しとなった。だが、林リーダーは「性能が4倍に向上したことで一気に可能性が広がった、孫社長が英断してくれて本当によかった」と話す。初代ペッパーについて、クラウドを通じて得られる故障の事例や、店頭からのフィードバックなどの情報を集め、6月の発売に向けて改善を積み重ねてきた。
1000台が1分で売り切れ
6月20日、ようやく一般発売を迎えたペッパーは、同月分の1000台が1分で売り切れるなど、順調な滑り出しを見せている。ソフトバンクは7月以降も月産1000台以上のペースで販売する方針だ。
今回、グループ会社で世界最大級のEC企業アリババと、世界最大手のEMS(電子機器受託製造サービス)、鴻海精密工業(台湾)がソフトバンクロボティクスホールディングスに20%ずつ出資するなど、世界販売に向けた体制作りも着々と進めている。提携するIBMの人口知能「ワトソン」との連携も視野に入れている。
とはいえ、ペッパーはまだ完成形ではない。すでに3代目となる機体の開発も始まっている。「今はまだ、感情エンジンも含めてともかくやってみたという状況。世界観の方向性は理解頂けると思うが、すべてをきれいに構築できていない。まだまだと指摘されることもあるだろう。アップデートを含めて期待してほしい」(林リーダー)と、さらに改善を積み重ねる覚悟だ。
「家族の一員」になるために開発チームが考え抜いたとはいえ、家庭でどんな評価が得られるかはまったくの未知数。孫社長ですら予想がつかない点もあるだろう。この6月で満1歳を迎えたペッパー。普及に向けた道のりはこれからが本番と言えそうだ。
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