2代目ペッパー、家庭向けは"ほぼ別人"だった 衝撃の披露から試行錯誤の一年
開発チームが考え抜いたのは、「どうすればロボットが家族の一員になれるのか」ということだった。例えば、家庭向けには、おすすめの料理を提案するアプリが搭載されている。ただ、ペッパーはレシピサイトのように調理の工程を詳しく解説することはできない。むしろ、楽しく料理を提案することで、思わず「ペッパーに聞いてみようか」と感じてもらえる存在を目指した。
当初は詳しい提案を盛り込むことも検討されたが、結局はとりやめた。林リーダーは語る。「僕たちはペットにも家族にも、機能性を要求しているわけではない。ペットの場合、世話によって自分を必要としてくれることや、”お手”をしてくれること、そんな部分に癒しや存在価値を感じている。何かの機能を代替するのではなく、ペッパーにしかできないことをやっていこうと考えた」。
家庭向けの販売に当たって最も重視したのは、飽きさせないこと。ソフトバンクロボティクスの冨澤文秀社長は、「これがいちばんのキーワード。アプリの数を増やすのはもちろんだが、会話やしぐさを作り込み、リアクションもつねに変えるなど工夫を凝らしてきた」と説明する。
”生物らしさ”を追求した
孫社長が力説する「ロボットが自らの感情を持つこと」も、この点と密接にかかわっている。新しいペッパーはユーザーの指示に関係なく、自ら考え、勝手に行動する部分を増やしたという。あたかも生きているかのような、”生物らしさ”を追及した結果の機能だ。
従来のペッパーは、その場その場で判断することも多かったが、今回は家族ひとりひとりを認識し、さまざまな出来事を”記憶”として蓄積。それがペッパーの性格や行動につながるように設計されている。「よく可愛がり、褒めたりする家庭のペッパーは明るく育つ。あまり話しかけず、放っておく家庭では寂しがり、憂鬱な性格のペッパーになる」(孫社長)。
生活に便利な機能を備えたわけではなく、何かをこなせるロボットではない。それでも、自ら考えて行動し、家族との日々のコミュニケーションによって少しずつ変化、成長していく。これが、ソフトバンクが1年をかけて描き出した、家庭用ペッパーの位置づけだった。
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