テレビ大量廃棄の闇、ブラウン管はどこへ--形骸化した家電リサイクル
だが、「心ない業者の中には、廃棄物同然の家電を交ぜ込んで輸出する場合もある」とある中古品業者は言う。日本でも不法投棄は社会的な問題となっているが、輸出先の海外現地でも、日本の廃テレビが環境汚染の原因となっている。
問題は廃テレビだけではない。廃エアコンの回収については、消費者が数千円の家電リサイクル料を支払わなくても、買い子が喜んで買い取る。エアコンは世界的に需給逼迫している銅を多く含むからだ。
買い子はそれを資源回収業者へと売り、中国などへ輸出。「ここ数年でリユースに回るエアコンが減少して困る」(中古品引き取り業者)との声が漏れるほどであり、買い子は高値で買い取る業者を目ざとく見つけている。
廃テレビも今後は買い子へ回る率が高くなるのは必至。エコポイント実施時は、政府が費用負担してリサイクル分をポイント加算したからこそ、リサイクル工場へ流れ着いた。環境省は「エコポイントがなくなり、今後は間違いなくリサイクル率は減少する」と覚悟する。
2001年に施行された家電リサイクル法から10年。テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の4品目を対象に、これまでの埋め立て処理を見直し、回収・分解したうえで、材料などの再利用を促すのが目的だった。
その一方、消費者は数千円のリサイクル券を購入して家電量販店などに引き取ってもらう必要があるが、義務化されていないため、こうした“抜け道”が存在する。地デジ特需や節電特需で廃家電が大量に生まれる中、あらためてシステムの形骸化を浮き彫りにした格好だ。
(前田佳子 =週刊東洋経済2011年7月23日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら