年俸165億円男ニケシュが「ガンバルロー!」 ソフトバンク4000人の社員大会で咆哮した

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「では、日本はどうでもいいのか。とんでもない。今まで、女房役として二人三脚でやってきた宮内ちゃんが代表取締役となって、ソフトバンク・ジャパンをリードしていく」

新生ソフトバンク(旧ソフトバンクモバイル)の宮内謙代表取締役社長が孫社長に紹介され、プレゼンに立った。

「超グローバルのニケシュに対し、私は超ドメスティック。しかし、国内グループはずっと皆さんの力で勝ち続けてきた。チーム力をアップして、ソフトバンク・ジャパン2.0に挑戦したい」

宮内さんのあいさつには「グループ各社」「グループシナジー2.0」など「組織」を意識した言葉が多く見られた。コリンズは「ビジョナリー・カンパニー」に、実は偉大なカリスマ的指導者は不可欠ではないと指摘した。「憲法制定会議に集まったアメリカの建国者のように、偉大な指導者になることよりも、長く続く組織を創り出すことに力を注ぐ」ことが必要だからである。

ビジョナリー・カンパニーの歴代CEOの特に重要な人物にはカリスマ性は少なく、むしろカリスマを意識的に避けてきた人もいるとコリンズは言う。なぜなら、ビジョナリー・カンパニーは「組織」であることが重要だからだ。宮内さんのあいさつを聞きながら、新生ソフトバンクがビジョナリー・カンパニーをめざす、見事な人事であると思えてきた。

ニケシュの咆哮、「ガンバルロー」

「これからは、宮内ちゃんも日本のリーダーとして、ニケシュもグローバルのリーダーとしてやり抜いていく。志、高く、やりぬいていこう」

孫社長の言葉で社員大会が終了、社員4000人全員の記念撮影となった。中央に孫社長、ニケシュ、宮内さん。「左手にうちわを持ち、私の掛け声で『ガンバロー』と右手を挙げてください。2回撮ります」。

司会者がそう説明したところで、孫社長が言った。「ガンバローは、宮内ちゃんにやってもらおう」。急な指名だったので、宮内さんが少しとまどいながら「ガンバロー」をした。

「次は、ニケシュ」。社員から自然に拍手が起きた。ニケシュは「何と言うのですか」と孫社長に聞いている様子だった。

「ガンバルロー」

インド英語なまりのニケシュの「ガンバルロー」に全員が唱和した。少しとまどいながらも、ソフトバンク2.0は確実に進んでゆくであろうことを予感させる「ガンバルロー」であった。

嶋 聡 ソフトバンク元社長室長

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しま さとし / Satoshi Shima

1958年岐阜県生まれ。名古屋大学経済学部卒業。松下政経塾第2期生。政経塾卒塾後、塾の指導塾員、研究所長、東京政経塾代表を務める。1996年より衆議院議員に当選、3期9年を務める(新進党→民主党)。民主党では、菅直人、鳩山由紀夫、岡田克也三代表の補佐役を務める。2005年、郵政解散による総選挙で落選。政界からビジネス界へのトップランナーになることをめざし、孫正義社長を補佐するソフトバンク社長室長に就任。2014年4月より同社顧問(2015年6月退任)。東日本大震災復興支援財団評議員、東洋大学経済学部非常勤講師などを兼務。著作に『政治とケータイ』(朝日新書)、『「大風呂敷経営」進化論』(PHP研究所)がある。

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