三菱「GTO」謎多きスーパースポーツ誕生の必然 もう生まれないバブルに咲いた真っ赤な大輪

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そもそも三菱自動車は、それ以前に「スタリオン」というスポーツカーを発売していた。その名前を捨ててまで、新しくGTOという名称を持ち出したのだ。しかも、GTOのイメージカラーは真っ赤で、デザイン自体もイタリアの某スーパーカーブランドのようである。

1998年のマイナーチェンジではスタイリングがより派手なものとなった(写真:三菱自動車)
1998年のマイナーチェンジではスタイリングがより派手なものとなった(写真:三菱自動車)

ちなみに、当時の三菱自動車の主力モデル「ギャラン」や「ランサー」はスクエアなデザインが特徴であり、曲線基調デザインのGTOのようなデザインはなかった。このデザインの唐突さも、不思議なところだ。

4WSに電子制御サスと当時の最新技術を満載

そんなGTOに搭載されるエンジンは、3.0リッターV型6気筒。NA(自然吸気)とツインターボがあり、ツインターボのほうは最高出力こそライバルと同等の280馬力だったが、最大トルクはスカイラインGT-Rの40.0kgmを上回る43.5kgm。

しかも、駆動方式は三菱自動車が得意とする4WDで、大トルクを余すことなく路面に伝えることができたため、ヘビー級でありながら、その加速力はライバルを圧倒していたという。

ツインターボ仕様はMTのみ。当初は5速でのちにゲトラグ製の6速となる(写真:三菱自動車)
ツインターボ仕様はMTのみ。当初は5速でのちにゲトラグ製の6速となる(写真:三菱自動車)

しかし、プラットフォームは、FFベースになっていた。なんと、エンジン横置きのFFをベースにしたフルタイム4WDであったのだ。

そのため前後重量配分は60:40と、思い切りフロントヘビー。これに、4WS(4輪操舵)、アクティブ・エアロ(スポイラーなどが速度に応じて動く)、電子制御サスペンションなど、当時の最新技術を目いっぱい盛り込んだ。

今から見れば、「どうしてイタリア風なのか?」「なぜ本格スポーツカーがFFベースなのか?」と、不思議な部分の多いクルマであったのだ。

では、なぜGTOは、そんな不思議な内容になってしまったのか。そもそもGTOという名称は、さらにさかのぼること20年になる1969年誕生の「コルトギャラン」に由来する。

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