『相棒』ただの刑事ドラマを超えた円熟の魅力 杉下右京の「やさしさ」と登場人物の「その後」
またこんな場面もあった。
第13話「恋文」。この回は、ラブレターが事件のカギを握るアイテムになっていた。また事件とは別に、薫と美和子(鈴木砂羽)の互いへの深い愛情が手紙を通じて浮き彫りになるサイドストーリーも。
そしてラストの場面。右京がひとり特命係の部屋でなにやら手紙を認めている。その書き出しには「宮部たまき様」とあった。
たまき(高樹沙耶[現・益戸育江])は、右京の元妻。特命係行きつけの小料理屋「花の里」の女将でもあった。連続ドラマ化される前の2時間ドラマ時代からの登場人物だったが、小料理屋をやめて世界を巡る旅に出てしまい、その後登場していない。
右京とは離婚しているが、2人のあいだには固い信頼関係、互いを思いやる気持ちがあった。その思いがいまも変わっていないことが、右京が手紙を書く場面からはひと目で伝わってきた。
似たような場面は薫に対してもあった。
第14話「亀裂」では、薫が右京に自作のティーカップを手渡す場面がある。右京の紅茶好きはいうまでもない。手先が器用とは言えない薫がつくったものとあってちょっと不格好なかたちなのだが、それを眺めた右京は、「不器用で愚直、そして温かい」とカップの印象を語る。
そしてそれが自分へのプレゼントであるとわかると、手に取ってなんともうれしそうな表情を浮かべる。カップへの称賛は、いうまでもなく薫に対する右京の偽らざる思いでもあるはずだ。
このようにしみじみとする場面の連続で、今シーズンの杉下右京はこれまで以上に“情愛のひと”という印象が強かった。
再び動き出した甲斐享の物語
さらに『相棒』ファンから注目を集めたのが、甲斐享(成宮寛貴)の“復活”である。
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