京都・西陣織は、絹という最高級繊維の織物の中で、世界最高峰の地位を不動のものとしている。
「衣食住」という我々の生活に必須の三要素のひとつにおいて「衣」が最上位に君臨しているのは、どういうことなのか。
さながら、食であれば「ミシュラン3つ星でこの先3年は予約がいっぱいのパリのレストラン」、住まいであれば「ニューヨークのチェルシーのペントハウス」といった憧れを、世界から集めているといったところだろうか。
世界のラグジュアリーブランド企業が西陣の「美」を学ぶ研修に訪れ、世界の有名美術館は、有名作家の非売品の「作品」を所蔵したいと狙っているという現実がある。
一方で、日本における着物の市場が過去30年で5分の1まで減退していることを受け、数十万〜数百万円の女性物の高級帯を主力として扱う西陣織は、産業として非常に苦しんでいる。
織元の職人の平均年齢は70代とも言われ、その技術の伝承に残された時間も長くない。
今後、西陣織が「衣」の世界最高峰として輝き続けるためには、次のような「3つの解」が必要となるだろう。
「集団と自国」から「個と世界」へという変化
1つめは、「作家」「プロデューサー」といった「個」へのスポットライトだろう。
1500年の歴史を持つ西陣織だが、驚くことに「戦前の西陣織で、作家名がわかっているものはない」と源兵衛氏は語る 。
美術品はもちろんのこと、ヴァイオリンなどの楽器でも、名作と言われているものは何百年前の製作者の名前が現代にも伝承されている。
日本刀や陶磁器でも「作家」や「来歴」は文化的価値を評価する基本的な要素であり、作家が当時の時代背景とともに作品へ込めた想いやストーリーの伝承が「価値の拠り所」となるのだ。
今後の社会は、SNSやブロックチェーン技術などにより、組織ではなく個人により価値がシフトすることが予想される。
西陣織においても「作家」がより前に出ていく必要性は高まるだろう。
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