介護施設の再建を阻む震災と債務の二重苦

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 「銀行借り入れの返済だけで月に100万円もの資金が必要。使用不能になったコピー機などのリース料も払い続けている」(蓬田氏)。将来の本格再開に際しては、新たに億円単位の資金も必要となる。だが、「その確保はまったくメドが立っていない」と、同氏は語る。

5月に成立した国の2011年度第1次補正予算では、「社会福祉施設等の災害復旧費」として総額815億円が盛り込まれた。鳴り物入りの予算には、グループホームの復旧に関する国庫補助も含まれているうえ、補助率は過去の災害時の2分の1から3分の2に引き上げられた。が、建設時に全額を自己資金で賄った施設は、現時点では補助の対象外。結果として、「自力で建設した県内の多くのグループホームが支援の対象から外れている」(蓬田氏)。

株式会社による設立が多いグループホームの場合、建設時に自治体から補助金を受けているケースはほとんどない。こうした介護事業者は入居者から徴収した居住費を建設資金の返済原資にしてきた。しかし、施設が被災したうえ、自治体から借りた仮設ホームは、入居者から居住費を徴収できない。その結果、既存債務の返済に支障が出るうえ、本格的な復旧のための補助金も得られないというジレンマに陥っている。

原発直撃の福島では事業再開メドも立たず

福島県では、原発事故も介護事業者に深刻なダメージを与えている。

福島第一原発から至近距離にある双葉町や大熊町のグループホームは、避難指示区域(現在は警戒区域)に指定されたことから入居高齢者を避難させた後、休止に追い込まれた(表参照)。その一方で、避難先でアパートを借りて事業を再開したグループホームもある。ユアライフ(鈴木康弘社長)が運営する「グループホームシニアガーデン」(鈴木氏および妻で管理者の洋子氏は写真)は現在、避難先の福島市内で仮オープンを実現。8月末には、富岡町の住民向けに仮設住宅が多く建てられている大玉村に移転し、仮設施設で再オープンする予定だ。


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