データで深掘り「大谷翔平のピッチング」のスゴさ 細部に対する分析はビジネスの世界でも役立つ

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その理由のひとつは、縦の落ち幅が小さく横に大きく曲がる独特な軌道にあります。

まるでブーメランのように横にスライドするため、打者がイメージするよりも落ちずに大きく曲がるのです。実際にWBCの決勝で最後の一球となったトラウトへのスイーパーも、大きく横に曲がり、トラウトのバットはボールの下を振っていました。

実際のデータでも、この独特な軌道を確認することができます。2023年メジャーリーグ全体のスイーパーの変化量平均は、上方向に3.1cm、横方向に36.1cmでした。一方、大谷選手のスイーパーをみると、上方向に9.0cm、横方向に40.5cmとなっています。

横方向への変化が大きく(=曲がりが大きく)、上方向への変化も大きい(=落差は小さい)ことがわかりますね。

大谷翔平
(図:筆者作成)

このように特徴的な軌道を描く大谷選手のスイーパーですが、実は大谷選手はスイーパーを投げるとき、投げ方を少し変えています。どのような違いがあるのかご存じですか?

スイーパーの秘密は「箱ひげ図」が教えてくれる

試合の映像を見ながら違いを判別するのは難しいかもしれませんが、リリースポイント(投球の際にボールが手から離れた位置)に着目すると、その違いがはっきりとわかります。

以下のグラフは、大谷選手の球種ごとのリリースポイントの左右位置を示した箱ひげ図です。

大谷翔平
(図:本書より引用)

グラフを見ると、スイーパーを投じるときのリリース位置が、他の球種に比べて横にあることがわかります。大きく横に曲がるスイーパーを投げられる理由のひとつに、腕を少し横振りにして投げていることが挙げられそうです。

このリリースポイントの違いを目視で見抜くことは、よほど目の肥えた人でなければ難しいでしょう。しかし、データを分析してビジュアライズすることで、誰でもその違いを把握できるようになります。

こうした発見は、例えば自分が投手であれば、より大きく曲がるスイーパーを投げるときの参考になるかもしれません。草野球でマウンドに上がる予定のある方は、試してみてください(笑)。

また、打者の立場であれば、球種を判別する際のヒントになるかもしれません。データの使い方は、考え方次第で様々な形に広げていくことができるのです。

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