マツキヨや佐川も導入「謎の軽バン」ASFの正体 日本の企業が中国で作る「ファブレス」の果実

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ASF2.0を実際にドライブした印象を端的に表現すると、「ふつう」かつ「静か」。EVだから当然だが、軽自動車にありがちな大きな機械音(エンジン音やトランスミッションからの音)がないのはメリットだ。

発進はすっと気持ちよく出ていく。市街地での配送ではたしかによさそう。30kWhの駆動用バッテリーは、一充電走行可能距離が209kmと発表されているので、配送拠点から近隣へのデリバリーに使うなら問題なさそうだ。

車線逸脱警報機能やASF開発の自走事故防止機能など安全機能も充実している(筆者撮影)
車線逸脱警報機能やASF開発の自走事故防止機能など安全機能も充実している(筆者撮影)

自動車専用道で試乗したときは、中間加速性能は「やや難あり」と感じた。バッテリー残量を確保するのと、少々ペースの速い交通の流れに乗るのとは、相反する。

バッテリー残量を気にして床までアクセルペダルを踏みこまないように走っていると、時速70kmがせいぜい。速度違反に問われることもない代わりに、ガソリンエンジンの軽商用車にもすいすいと抜かれてしまった。

ASFの「異様さ」が当たり前になる日

私がASF2.0に乗ったのは、JAIA(日本自動車輸入組合)開催の試乗会。JAIAは正規輸入車の日本法人、ほぼすべてが加入している団体で、加入社のプロダクトを集めてジャーナリストに試乗させるというイベントである。

テスラ「モデルY」もあれば、BMW「i5」やメルセデス・ベンツ「EQE」、さらに、フォルクスワーゲン「ID.4」やボルボ「C40 Recharge」、はたまたヒョンデ「コナ」やBYD「ドルフィン」など、“そうそうたる”と言いたくなる最新のBEVが並ぶ。

そのなかで、軽商用車のASF2.0は、はっきりいって異色。多くのジャーナリストが「ちょっと異様な光景」と評していた。

筆者が以前、試乗したBYDドルフィン(筆者撮影)
筆者が以前、試乗したBYDドルフィン(筆者撮影)

EVベンチャーというと、「なにか目新しいことをやってくれるのではないか」と、(あらぬ)期待をしがちだけれど、しっかりとビジネスを考えて乗り出したASF社の方針は、しかし「しごくまっとう」といえるもの。

冒頭で触れたとおり、ASF社は日本の企業だが、ファブレスというビジネスの方針も、いろいろな面で小回りが利いて、やりやすいだろう。なので、「異様さ」が感じられたとしても、近い将来「当たり前」になるかもしれない。

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ASF2.0の価格は、260万7000円。当初は「100万円台のクルマを作りたい」というASF社の飯塚社長の発言が報道されていたが、さすがにそれは無理だったようだ(もちろん、今後はわからないけれど)。

一般への販売は当面はなく、「リース販売のみ」とASF社ではしている。一般販売はないとはいえ、スズキやダイハツは、うかうかしていられなさそうだ。

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小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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