「ある朝学校に行けなくなった」適応障害で休職した教員が復職後に手放したこと ゆきこ先生の回復を早めた「校長先生の言葉」
以前は人間関係にもだいぶ悩んだが、この点に関しても意識が変わったという。
「職員室ではうまくやろうとすることや嫌われないようにすることはやめました。否定され続けるなどしんどいときは、『自分は孤独』『私の考えは受け入れてもらえない』などと思いがちですが、実際はそうじゃない。意外と自分と同じような状況や考え方の人はいて、そうした人を見つけて関わりを深めていくようになりました」
自分の教育観や軸を、自分が認め続けてあげる
渡邊氏は、2022年に産休・育休を取って一旦退職、2023年から非常勤講師として働いている。学校外の活動も増えたが、「フルタイムの正規教員という選択肢を捨てたわけではありません。ご縁を大切に今後も教育に関わり、自分を生かせたら」と話す。
苦しい時期を乗り越えた渡邊氏は、「教員はやはり、自分の教育観や軸を、自分が認め続けてあげることが大事ではないか」と考える。
「いろいろな人間関係がある現場だから、ときには誰かから否定されるかもしれない。状況に応じて柔軟にやり方を変えていくことも必要ですが、それでも自分は何をしたかったのか、子どもたちにどんな未来を見てほしいのかといった信念を磨くことは大切だと思うんです。今何かに悩んでいる人は、1人で抱え込こまず、自分と同じ軸を持った人を学校内やSNSなどで探して関わってほしい。そうすることでしんどさから抜け出せることもあると思うから、私はSNSの発信を続けています」

(画像:インスタグラムより)
昨今の精神疾患による休職者は、若手が多い。自身も苦しい初任時代を過ごしてきた渡邊氏は、次のように語る。
「まず若手の先生は、100点をとろうと思わないこと。『今年の自分の注力ポイントはここ』と決めて、段階的に自分のスタイルをつくっていくことが先決です。いろんな先生を俯瞰的に見てみると、誰しも不得手なところがあることがわかるはず。しんどいときは、無理だと思う3歩手前で休むこともこれからは大切なスキルだと思います。学校の仕組みとしては、山形県のように初任者には副担任からスタートさせるのがよいのではないでしょうか。さらに、業務負担が重くない状態は保ちつつ、若手の先生が学べる仕組みを考えていけたらいいのではないかと思います」
労働環境が改善されない中、教員の仕事は大好きで続けたいけれど「しんどい」と思っている教員は、きっと少なくない。そんな教員たちに、渡邊氏はこう語りかける。
「そう思っている時点で、きっと諦めたくないんだと思います。辞めると決めている人は、おそらく続けたいとは微塵も思いません。子どものためにまだやれることがあるのではないか。そうした思いを大切に、自分を責めずに何がしんどいのかを丁寧に見つめ直してほしい。その先に休む、辞めるという選択肢があってもいい。それでもやはり教育の世界だと思ったのなら、自分に合った子どもたちとの関わり方が絶対にあるはずです」
(文:國貞文隆、注記のない写真:渡邊友紀子氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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