元祖トクホ茶「ヘルシア」、キリン移籍でどう変わる 21年目の老舗ブランド、花王の構造改革で売却

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キリンの緑茶ブランド「生茶」は2023年に2780万ケース(出荷ベース)を売り上げたが、緑茶市場でシェアは長年4位。伊藤園「お~いお茶」、サントリー「伊右衛門」、コカ・コーラ「綾鷹」の後塵を拝す。飲料市場全体では、2022年のキリンビバレッジのシェアは5位となっている(いずれも飲料総研調べ)。

国内の人口減で飲料市場の大きな成長が望めない中、キリンは商品の付加価値化で単価上昇を進めている。2019年には免疫維持のサポートをうたう独自素材「プラズマ乳酸菌」を主力に据えた「ヘルスサイエンス」事業がグループ横断で立ち上がり、キリンビバレッジが牽引してきた。

「iMUSE(イミューズ)」や「おいしい免疫ケア」、プラズマ乳酸菌入り生茶の商品などを続々と発売しており、機能性表示食品はキリンビバレッジで11商品、グループ全体で36商品にのぼる(2023年12月末時点)。2024年度にはヘルスサイエンスを黒字化させる計画を掲げる。

2022年から2社でコラボしていた

これまでキリンは「免疫」を強く押し出してきたが、ヘルシア買収で「内臓脂肪」への効果もうたうことができるようになる。「大きな社会課題である“体脂肪・内臓脂肪”領域へチャレンジしていく」(キリン)と意欲的だ。茶系飲料の中で高価格帯に位置するヘルシアブランドは、キリンの戦略とも合致する。

キリンはスーパーやコンビニの販路に加え、全国に約18万台の自販機を持つ。ヘルシア緑茶の年間販売数量が180万ケース(2023年、飲料総研調べ)に留まる中、まずは販売面での相乗効果から見込めそうだ。

花王とキリンの両社は、2022年から免疫機能と内臓脂肪との関連について共同研究を実施している。キリンはヘルシアとコラボし、昨年11月には「免疫ケア・内臓脂肪ダウン」をうたうサプリメントを販売。翌12月には、花王がプラズマ乳酸菌を入れたヘルシアを発売していた。機能性表示食品市場では、1つの商品で複数の機能をうたう「マルチヘルスクレーム」で差別化する商品が増えている。

ヘルシアブランドはキリンビバレッジに限らず、グループ全体で活用を検討する方針だ。発売21年目を迎えた元祖トクホ茶が、花王からキリンへ看板を変えて再び輝けるのか。8月から再スタートを切ることになる。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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