元祖トクホ茶「ヘルシア」、キリン移籍でどう変わる 21年目の老舗ブランド、花王の構造改革で売却

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花王の中期戦略において、ヘルシアは直近まで重要な立ち位置を担っていた。

今から3年前、2021年1月の社長就任時に長谷部佳宏社長は、2025年までの中期経営計画で「アナザー花王」という新構想を掲げた。「生命を守る事業」というコンセプトで「ライフケア事業」を新設。ヘルシアはこの事業に組み込まれ、「生活習慣病予防など、人の健康・命を守るための活動に取り組んでいるブランド」と、これまでの日用品事業とは別軸に位置付けられた。

しかしライフケア事業は、直近の2023年12月期で売上高563億円、営業赤字53億円に沈む。長谷部社長は「アナザー花王の中核は、他社と協力しながら研究資産を増やして拡大していくこと。ライフケア事業は今後も成長するべく舵を切っていく」と説明。研究開発などの費用先行が続く中、知名度は高いものの採算が悪化しているヘルシア事業は売却対象となった。

最高益から一転、4期連続減益

花王は2019年度まで7期連続の営業最高益を更新していたが一転、2020年度から4期連続減益と苦しい状況に置かれている。2019年度に2117億円あった営業利益は、2022年度に1100億円まで縮小。原材料高騰による主力の衣料用洗剤の採算悪化や、インバウンド需要の剥落で紙おむつの販売数量が激減するなどの要因が重なった。

2023年度は構造改革費用として547億円を計上した影響で、営業利益は前期比45.5%減の600億円で着地した。業績の立て直しに向けて、早期退職などの人材関連費用で150億円計上したほか、昨年8月に紙おむつ「メリーズ」の中国生産撤退を発表。中価格帯メイク「オーブ」は今年8月末に販売終了と、人員体制や事業、ブランドの再構築を進めている最中だ。今回のヘルシアも構造改革の一環となる。

花王の看板がなくなるヘルシアは今後、どうなるのか。キリンは今回の買収によって「ヘルスサイエンス(健康関連)領域の強化・拡大をさらに進め、高収益化を目指す」と狙いを語る。

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