ホンダ「ステップワゴン」大胆変身に託す真意 かつての絶対王者は「3番手」から脱せるか

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四角を基調としたデザインは健在ながら、左右非対称の特徴的なスタイルを採用

日本の自動車業界では全長4.7m、全幅1.7mに収まる乗用車を「5ナンバーサイズ」と呼ぶ。5ナンバーとはたとえば「品川501~」「神戸530~」など、ナンバープレートの登録地域に続く番号。正確にはガソリンエンジンの場合で排気量2000ccを超えると、5ナンバーサイズであっても3ナンバー(「品川301~」「神戸330~」など)で登録されるものの、狭い日本の道路になじみやすい車体サイズとして、ユーザーにも認知されている。

5ナンバーサイズで運転のしやすさを確保しながらも、床が低く四角を基調としたデザインによって、最大おとな8人が比較的ゆったり乗れること。さらには扱いやすく車両価格、税金、保険料が高くなりすぎない大きさのエンジンを搭載して、高速道路の走行にも余裕を持たせたこと。多人数乗車に重きを置く日本人ユーザーのニーズにガッチリはまったことが、初代ステップワゴンが大人気を博した大きなポイントだったといえる。

トヨタ「ノア/ヴォクシー」、日産「セレナ」が後追い

トヨタや日産はそんな初代ステップワゴンの成功をなぞって追いかけてきた歴史がある。日産はキャブオーバーだった「バネットセレナ」の後継車種として、ステップワゴンと同じFF方式にした「セレナ」を1999年に発売。トヨタも同じくキャブオーバーだった「タウンエースノア」「ライトエースノア」をFF方式に転換した「ノア」「ヴォクシー」を2001年にそれぞれ投入した。

その後、ステップワゴン、ノア/ヴォクシー、セレナという5ナンバーサイズの箱型ミニバンは、それぞれがモデルチェンジを重ねながら一大市場を築く。この4車種はミニバンブームが一段落した今でも、車名別ランキングの上位でハイブリッド車やコンパクトカーなどの一角に食い込む。

ところが、気がつけば後発であったはずのノア/ヴォクシーやセレナが、今では販売面でステップワゴンをしのぐという構図になっている。販売店の数をはじめとする販売力の差も影響しているだろう。また、ホンダには同門に「フリード」という出来のよい弟分が現れたことで、少なからずシェアを食われたという事情はあるにしても、ステップワゴンの販売台数が落ちたことには違いない。ホンダにとってはいまだに稼ぎ頭の一つとして十分な台数を売っているものの、このまま競合の後ろを走ってはいられない――。5代目ステップワゴンを投入した裏側には、そんな忸怩たる思いがあるはずだ。

試乗の感触などを踏まえると、筆者は5代目ステップワゴンのクルマとしての完成度は、ライバルとの三つどもえの中で一歩抜きんでたという印象を持っている。

5代目ステップワゴンは発売前にはどちらかというとネガティブな印象を持ったユーザーが多かった。SNSやネット掲示板などにおける書き込みは不評の声が大きく、開発関係者に聞くと「涙なくして語れない」というほどだったからだ。ところが、発売後にはそれが変わったように感じられる。そして、その独特な商品構成は、なかなかに偶然の産物でもある。

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