実践の経営学を探究する井上達彦教授が、ディープテックが世界に羽ばたくための要素を探る。スタートアップが持つ技術の芽をいかに育むか。
井上:このプログラムが2019年に生まれた背景についてお聞かせいただけますか。
森久: 当時、リコーは複合機を中心としたオフィスプリンティングに加えて、ICT関連のサービス事業を大きく伸ばそうとする時期にありました。そうした中で2017年に山下良則現会長が社長に就任し、会社が大きく変わろうとしていました。
自前主義からの脱却を模索
経営企画部門では、リコーが創業100周年を迎える2036年を見据えて、新しい提供価値、事業の創造や変革が必要だという議論が起こっていました。開発も生産も販売もすべて自分たちで行おうとする過度な自前主義から脱却し、研究開発された技術をサービス化するための、スタートアップとの協業や連携も模索されていました。
社員と役員とが語る場でも「ルールに縛られて、新たな挑戦をする機会が少ない」という声も上がっており、挑戦の場が必要だったんです。
井上:大企業同士の連携ではなく、スタートアップに注目されているのには何か理由があるのでしょうか。
森久:新しい市場領域において挑戦していくという点では、大企業よりもスタートアップが盛んです。 リコーとしては、それまでもスタートアップとコンタクトしていたものの、さらに一歩踏みこんだコミュニケーションを取るチャネルをがなかった。そこで、当時社長だった山下の直轄プロジェクトとしてスタートしました。
井上:TRIBUSの最大の特徴は、社外と社内のプログラムを統合している点です。このような枠組みは珍しいのではないでしょうか。
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