実践の経営学を探究する井上達彦教授が、ディープテックが世界に羽ばたくための要素を探る。スタートアップが持つ技術の芽をいかに育むか。
井上:「スタートアップ創出型のカーブアウト」に注目した背景について教えてください。
齊藤: 日本でどのくらいの技術が埋もれているのかという話から始めさせていただきます。経産省の調べでは、この国で約13兆円の研究開発費が投じられているのですが、そのうち約9割が500人以上の従業員を抱える大企業によるものです。
大企業が研究開発を担っている割合は、イギリス、フランス、韓国は7割ぐらいまでに落ちてきていますし、大企業への依存度が高いアメリカやドイツでも8割ぐらいです。日本が一番大きく、9割前後で推移しています。
大企業で消える7.3兆円分の研究開発
ところが、国内の大企業へのアンケート調査では、研究開発後に事業化されない技術の63%が有効活用されず、そのまま消えています。
水面下での検討はされているものは19%、グループ内企業での活用が11%、そしてオープンイノベーションとして実際に他企業で活用されるのが5%、社員・組織のスピンオフが2%にとどまります。
日本の9割の研究開発を担う大企業のうち約6割が事業化されずに埋もれている、つまりイノベーションに結実していない計算です。
井上:そうだとすれば、イノベーションはスタートアップに委ねるという発想があってもいいですね。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら