森久: TRIBUSには多様な参加形態があります。
応募者だけが注目されないように、提案リーダーやメンバー以外に、副業制度等を活用してチームに寄り添うメンバーがいます。さらには、挑戦する方たちを、得意分野で支援するサポーターたちが460人ぐらいいます。 少しゆるい感じで、イベントなどに自発的に参加してくれるような人たちです。
TRIBUSコミュニティには1600人ぐらいの方が加入していて、そこには将来は自分も応募したいというような人も含まれます。
社内チームやスタートアップは、このコミュニティをうまく活用して、仮説の検証をしたり、インタビュー調査に協力してもらうことができます。外部のキーパーソンを紹介してくれたり、 周知や宣伝に協力してくれたりもします。自分たちの専門領域を活かしながら、壁打ちに付き合ってくれることもあります。
井上:社内チームとスタートアップの統合というご説明でしたが、それを超えたイノベーションのコミュニティが形成されているわけですね。この関わり方はどのように表現されているのですか。
役割のグラデーションが培う視点とつながり
森久:われわれはグラデーションと言い表しています。応募する人、助言する人、社内、社外と、役割を明確に分けようと思えばできるかもしれませんが、それが最善とは限りません。むしろ、明確な境界を設けずに、役割にグラデーションを残しています。
あるときは、こちら側の立場としてやるけど、別のときはあちら側になるかもしれない。あるいは、両方の視点を持ちつつ活動する。オープンイノベーションにおいても最初から権利関係でガチガチに線を引くのではなく、グラデーションの発想で進めていったほうがいい場合もある。
井上:グラデーションってすごく日本的な考えだと思うんですよ。アメリカだと、よくも悪くも役割が明確です。目標や手段が明確でない事業創造プロセスでは、グラデーションという組織編成原理は、とても本質的な感じがします。
森久:そうですね。推進する側の人が支援する側に回って、支援する側の人が推進する側に回る。スタートアップとの共創で経験を積んだから、今度はスタートアップの公募時に一緒にやろうよと手を上げる。多方面で役割の変化を伴うつながりができるんですよね。
初年度に面白いチームがありました。
提案リーダーとメンバー4人ほどで構成されたチームで見事に最終採択されたのですが、その後チームとしてはいったん解散してリーダーだけが残りました。 リーダーは別のメンバーを募集して事業を進めたんですけど、解散したメンバーの人たちはどうしたかというと、次の年、別々のアイデアを応募したわけですよ。
井上:役割を入れ替えることで、全体的に能力を伸ばすことができそうです。伴走社員をしたからこそわかること、サポーターをしてみてわかること。それをバランスよくこなしているうちに相手の立場もわかるようになります。
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