9割の人がダメ出しする技術に先行投資する思考法 WERU瀧口匡が生成AIに投資せず待っていた技術

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実践の経営学を探究する井上達彦教授が、ディープテックが世界に羽ばたくための要素を探る。スタートアップが持つ技術の芽をいかに育むか。

大学を源流とするVCの投資戦略とは(写真:i-flower / PIXTA)
未来の構想において大切なのは、基本的なものの見方としての「観」(perspective)である。未来で起こりうる出来事は客観的事実として分析できないので、過去の経験や哲学から主観的な仮説として提示していくしかないからだ。
神戸大学の三品和広教授は、戦略構想における「事業観」の意義を解く。興味深いのは、その土台に世界観、歴史観、人間観という3つの観があるという指摘だ。
事業観とそれを支える3つの観という考え方は、未来を切り開く起業家のみならず、そこに懸けるベンチャーキャピタリストにも役に立つ。
今回ご紹介するのは、大学を源流とするベンチャーキャピタリストとして、もっとも長いキャリアの持ち主の一人である、WERUインベストメント代表取締役社長の瀧口匡さんである。1998年から投資活動に従事し、これまで25社の株式公開を支えたという実績の持ち主だ。
その投資戦略の秘密のレシピについて語っていただいた。

井上:日本のベンチャーキャピタル(VC)は世界標準から離れ、遅れていると伺います。

瀧口:日本のスタートアップの業界というのは、ある意味でガラパゴス的なんですね。これは悪い意味ではなくて、日本的なんです。シリコンバレーのベンチャーの動きと日本の動きは基本的に違いますから。

どちらがよいかという問題ではなく、根本的にゲームが違うんです。だから、私も日本でゲームをやるときは、日本型のゲームとして参加しています。でもアメリカで投資するときはグローバルなゲームだと理解してやります。

「その場で決める」アメリカ、裏付け求める日本

井上:何が違うのでしょうか。

瀧口 匡・ウエルインベストメント代表取締役社長
瀧口 匡(たきぐち・ただし)/1986年に野村證券に入社。財務情報部や事業開発部等を歴任。その後、ベンチャーファンドやヘッジファンドのマネジメントを経て、2005年に早稲田大学の認定ベンチャーキャピタルであるWERUインベストメントの代表取締役社長に就任。2009年に現在の統合報告書の概念の基礎となったインタンジブルズの分野において早稲田大学で博士号(国際経営)を取得。早稲田大学商学学術院客員教授(WERUインベストメント提供)

瀧口:アメリカだと役割分担が明確なんです。アーリー、ミドル、レイターそれぞれのステージを得意とする投資家がいて、全員がリスペクトし合っている。役割分担ができているので判断も早いです。

いい案件があったら、その場で感触を伝えます。話を聞いた瞬間に「金額の大小は別にして、とにかく出すから」と伝え、その瞬間に握ってしまうわけですね。

一方、日本の場合は役割分担が明確ではなく、組織の意思決定ですから裏付けや根拠が求められます。主に、ミドルステージ以降でゲームが進められるので判断材料も徐々にそろってきます。意思決定の場面でも「社内の投資委員会にはかるので3カ月待ってください」というのが少なくありません。

日本で求められるのは、日本市場に最適化された国内ゲームです。そのゲームでしっかり利益を上げていくことを考えているわけですから、セコイア・キャピタル(アメリカの大手VC)が求めるような巨大ビジネスを目指していません。

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