井上:何か物足りない感じもします。それで世界経済に貢献できるのでしょうか。
瀧口:日本にはグロース市場(新興企業向けの株式市場)があって、世界でも有数の引き受け先となっています。キャッシュフローネガティブ、つまりマイナスのキャッシュフローの会社をバイオ関連以外で引き受けることができる市場は、一部のアメリカのケースを除けば、日本にしかないと思いますね。
赤字上場したアマゾンみたいな規模の企業は無理にしても、キャッシュフローネガティブの小規模の会社を引き受けることができるのは日本の市場しかない。この市場をベースに日本国内の産業として成長し、勝っていこうというのは適切です。
井上:WERUインベストメントはどのステージで勝負しているのですか。
実績のないビジネスを評価する推論法
瀧口:私たちはアーリーステージの投資家です。グローバルなスタートアップを日本国内で育てるためには、このステージが大切で、アメリカの投資家たちから、その考え方や方法を学ぶ必要があります。
技術自体を評価することはできます。しかし、それを担う経営者は変わっていく。どうすれば実績のないビジネスを評価できるのか。ある人は「勘だろう」と言いますが、単なるヤマ勘とは違うと思いました。
あるとき、9割の人がダメだと言った技術について、その領域に詳しい人が「あ、これ面白いよね」と言うので進めてみたら、うまくいった。
その人が、なぜうまくいくと思ったかというと、それまでの経験、見地、ナレッジでした。9割の人は一般的概念、普遍的な概念で物事を見てダメだと判断したのに対して、その1人だけは違う目線を持っていました。
ここにヒントがあると調べていくうちに、東京大学の伊東俊太郎先生が書かれた『科学と現実』という書籍に辿り着きました。1981年の古い本ですが、この中に、帰納法、演繹法、仮説推論など、いろいろな推論法が説明されていました。
これを見たときに「ハッ」と思い、仮説推論型の投資というものを構築していったんです。これが私たちの投資戦略となりました。現在、アーリーステージで成果を出すことができているのも、この推論のおかげです。
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