瀧口:その通りです。裏を返せば、「何に投資しないか」の判断もリサーチに基づいて行う必要があります。
たとえば、私たちは、まだ量子コンピューティングに投資していません。いろいろなお話をいただくのですが、「まだまだ先だ」と認識しています。どこかで動こうとは思っていますが、やはり5年から10年の間で結果を出さなければならない。
まだまだ先なので仮説推論してタイミングを見計らっています。
学会にも出席してリサーチしています。オーストラリアのメルボルンで開催されたとき、研究者が量子を安定させるのに苦労していることがわかり、まだまだ先の技術だなと思いました。
産学連携に不可欠なのは「ストーリーを描く」役割
井上:会社のメンバーはどのような経歴をもっておられるのでしょうか。
瀧口:テック系の勉強をしたことがある人を求めます。
たとえば、宇宙工学だと、ジョージア工科大学の出身でNASAに少し在籍していたメンバーがいます。九州大学出身で、ペンシルバニア大学で鉱物や資源やマテリアル系の知識を得たメンバーもいる。
必ずしも専門家でなくても構わないです。たとえば、早稲田大学を出て、東工大のMOT(技術経営修士)の学位を持っているメンバーもいます。テック系のベンチャーに行って、その後テックマネジメントを勉強したという経歴の持ち主ですね。
担当するフィールドで何を調べればいいかがわかっていることが大切です。こういうメンバーを最前線に立てています。
井上:そうすると瀧口さんとWERUのメンバーがリサーチをして推論型の仮説を立てているのでしょうか。
瀧口:アーリーステージのキャピタリストが最初からストーリーを描けるわけではありません。その技術について、どのような推論をして仮説が出せるのか。筋のよいストーリーを描いて提示してくれる人が必要です。私たちもそれに触発され、空白を埋めながら投資の判断をします。
この点で大きくリードしているのがアメリカの産学連携です。技術の価値づけと実装をストーリーとして描き出してくれる。これによって、ベンチャーキャピタリストは投資の判断をしやすくなる。特にスタンフォード大学のSRI(Stanford Research Institute)にはストーリーを作る人が必ずいます。
日本の大学にも産学連携の方がいらっしゃるのですが、そこまでは難しいようです。
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