リコーの「ビジコン」出資先選びではない真の狙い 大企業社員とスタートアップが学び合う共同体

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森久:選考プロセスで大切なのは、提案のベースに一次情報があることです。二次情報の調査資料を見てわかった気になることがいちばんよくない。自分で取りに行った情報が何よりも重視されます。

それゆえ「初期段階での予算はすべてヒアリングに使ってください」と伝えています。1年目だと海外に行くことも珍しくありません。実際にインドに行ったりとか、フィリピンの山奥を訪問したりしています。一次情報を集めるときにはチームの人脈には限りもあるので、リコーの持っているコネクションをフルに使ってもらいます。

ここで数十万から数百万円の活動費を自己判断で使うのですが、このような裁量は、通常はある一定の役職にならないと得られない。何に必要かを考えて自分のお金を使うのかという経験も大切です。

井上:こうして最終ピッチへと向かうわけですね。

社内に広がるイノベーションのコミュニティ

森久:最終ピッチの「インベスターズデイ」で社内チームの最終のセレクションが行われます。毎年、大体2つか3つのチームに絞られます。社内事業として認められるので、予算も桁違いに増えて、約2年半にわたるインキュベーション期間においては数千万から億単位になります。

一方、スタートアップはセレクションではなく、リコーグループとの共創のあり方が検討され、最後はそれに向けた成果発表をしていただきます。そこから事業部門と具体的にサービスをつくっていくこともある。

ゲストには共創パートナーの大企業さんもいるので、「うちの会社と組んだら成長事業がつくれる」と声をかけていただくこともあります。

井上:至るところに工夫があって波及効果も大きそうです。

森久:社員は誰でもオンラインでピッチを見ることが可能です。リアルタイム視聴だと、1000人以上が閲覧しています。

2019年はオフラインのピッチをしていましたが、今はハイブリッドで行っていて、地域を超えてリコーグループの社員にその熱量を伝えています。リコーの本社やこの海老名事業所周辺の社員だけでやっている感じはありません。沖縄の方も参加できるし、秋田とか遠方の方も参加できる。一気に成長しました。

例えば、知り合いが社内ビジコンに応募していれば「見てみよう」という気になります。 すると、期せずして「スタートアップってこんな感じなのか」と知ることができる。社内ビジコンに出場しているチームを見て「社内にこういった人材がいるのか」と気づく。

井上:イノベーションのコミュニティができそうですね。

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