JR西の新駅で利用客が激減した私鉄駅はどこ? 関西私鉄の駅とJRの駅、ユニークな関係の数々

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同じエリアにあり、同じ駅名でありながら、賑わいがまったく異なる例もある。その一例が阪神本線の住吉駅とJR住吉駅だ。JR住吉駅は前述したJR六甲道駅の東隣に位置する。JR住吉駅の乗車客数が約3万人(2021年度)に対し、阪神住吉駅の乗降客数は約2300人にすぎない。じつにJR住吉駅の10分の1以下である。しかも、高架駅でありながらエレベーターなどのバリアフリー設備は皆無である。

なぜ、ここまで差が生じているのだろうか。まず、JR住吉駅と阪神住吉駅の間の距離は約700m。両駅を結ぶ路線バスの本数もそれほど多くない。次に駅周辺の環境が異なる。JR住吉駅には六甲ライナーが乗り入れ、商業施設「Liv」と直結する。

これに対して阪神住吉駅の周辺には商店は見当たらず、主要駅の御影駅とは500mしか離れていない。御影駅は特急停車駅であり、駅前には商業施設「御影クラッセ」がある。この環境下なら住居が阪神住吉駅に近くても、御影駅を利用する人も多いと考えられる。

近鉄天理駅とJR天理駅の関係

同じく賑わいに差がある駅としては近鉄天理駅とJR天理駅が思い浮かぶ。こちらは賑わっているのが近鉄のほうで、乗降客数が約8300人。JR天理駅の乗車客数は2000人以下(2021年度)だ。これは、日中時間帯の列車本数を見ても明らかだ。近鉄天理駅は1時間あたり3~5本が設定され、盛り場の大和西大寺に向かう直通急行もある。

一方、JR天理駅は奈良行きの列車が昼間時間帯1時間あたり1本しかない。普段は天理教信者向けのメッセージ「おかえり」のステッカーががらんとした構内で目立つだけだが、天理教の行事日には多数の臨時列車が天理駅に到着する。そのための臨時ホームも用意されている。

これほどまでに差が生まれるのは、ひとえに路線環境のせいだ。近鉄天理線は複線であり、大和西大寺駅や奈良市の中心に位置する近鉄奈良駅につながる。JR天理駅を通る万葉まほろば線(桜井線)は単線であり、奈良駅は奈良市の中心地から少し外れる。奈良駅までの各駅はローカル駅であり、盛り場とは無縁だ。

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このように、客層まで観察すると、関西私鉄とJRとの間で大きな差が生じる場合がある。もちろん、環境の変化により大きく変わることもあるだろう。

新田 浩之 フリーライター

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にった ひろし / Hiroshi Nitta

1987年兵庫県神戸市生まれ。2013年神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道をはじめ、中欧・東欧・ロシアの鉄道旅行、歴史について執筆。2018年にチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」に就任。

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