JR西の新駅で利用客が激減した私鉄駅はどこ? 関西私鉄の駅とJRの駅、ユニークな関係の数々
さて、2018年の阪急総持寺駅の乗降客数は約1万5000人となり、約2割も減った。JR総持寺駅から大阪駅までの昼間時間帯の所要時間が乗り換えなしの19分なのに対し、阪急総持寺駅から大阪梅田駅までの所要時間は茨木市駅での特急乗り換えを含めて21分である。
運賃もJRと同額であることから、利便性はJRに軍配が上がる。また、阪急総持寺駅の駅前は狭く、バスが乗り入れることは難しい。JR総持寺駅とは異なり、バスの利用者を取りこめない点はなかなか厳しいところだ。
新駅はJRの「投資」
同じく、JR新駅の影響を受けたのが阪神本線の阪神西灘駅である。阪神西灘駅は神戸市灘区にあり、駅名は「西灘」となっているが、実際はJR灘駅よりも東に位置する。西灘駅も普通しか停車しないが、1974年まで阪神国道線との乗換駅として機能していた。現在も国道2号線を走る阪神バスと接続している。2015年の1日の乗降客数は約6700人であり、阪神線においては乗降客数が少ない駅だ。西隣の岩屋駅や春日野道駅と異なり、東部新都心「HAT神戸」から離れている点も大きいだろう。
2016年になると約5600人に減った。この乗客減の主因になったのが同年3月、西灘駅から約300m北に開業したJR神戸線(東海道本線)の摩耶駅だ。かつては東灘信号場が存在した。
摩耶駅周辺においてもマンション開発が進んでいる。また、西灘駅と比較すると、大阪駅へは10分弱も早く着く。関西エリアでのJR西日本の新駅開業の特徴は、地元自治体が積極的に誘致した「請願駅」ではなく、地元自治体と協力しながらも、あくまでJR西日本が主体となっている点だ。「JR西日本による投資」ともいえるだろう。新駅開業にともない、駅周辺のマンション建設等もセットで行われる。
当然のことながら、新しく建設されるマンションは新駅との接続が考慮されるから、住民の多くはJR西日本へと流れることは容易に想像がつく。つまり、私鉄からすれば開発の恩恵にあずかれないどころか、逆に既存ユーザーが離れる格好になっているのだ。
もちろん、JR西日本のすべての新線・新駅が私鉄の利用客を大幅に減らしているわけでもない。新駅開業にともない、大幅に利用客が減少した駅、それほど減少しなかった駅を観察・考察するのも面白いだろう。
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