紫式部がつづる女流作家「清少納言」への"対抗心" ほぼ同時代に生き、同じような地位・立場だった

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「清少納言こそ、したり顔にいみじう侍(はべ)りける人。さばかりさかしだち、真名(まな)書き散らして侍るほども、よく見れば、まだいと足らぬこと多かり」(原文)

「それにつけても清少納言ときたら、得意顔でとんでもない人だったようでございますね。あそこまで利巧ぶって漢字を書き散らしていますけれど、その学識の程度ときたら、よく見ればまだまだ足りない点だらけです」(山本訳)

寒々しくて風流とはほど遠い

さらに紫式部は、こうまで、したためています。

「かく、人に異ならむと思ひ好める人は、必ず見劣りし、行末うたてのみ侍るは。艶になりぬる人は、いとすごうすずろなる折も、もののあはれにすすみ、をかしきことも見過ぐさぬほどに、おのづから、さるまじくあだなるさまにもなるに侍るべし。そのあだになりぬる人の果て、いかでかはよく侍らむ」(原文)

「彼女(清少納言)のように、人との違い、つまり個性ばかりに奔(はし)りたがる人は、やがて必ず見劣りし、行く末はただ『変』というだけになってしまうものです。例えば風流という点ですと、それを気取り切った人は、人と違っていようとするあまり、寒々しくて風流とはほど遠いような折にでも「ああ」と感動し「素敵」とときめく事を見逃さず拾い集めます。でもそうこうするうち自然と現実とのギャップが広がって、傍目(はため)からは『そんなはずはない』『上っ面だけの嘘』と見えるものになるでしょう。その『上っ面だけの嘘』になってしまった人の成れの果ては、どうしたらよいものでございましょう」(山本訳)

紫式部は筆鋒(ひっぽう)するどく、清少納言を批判しています。どちらかといえば、感情的ともとれる書きぶりです。

清少納言
京都市右京区の車折神社「清少納言社」(写真:kei/PIXTA)
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