「正解主義」と「エセ平等」の呪縛から脱却せよ 藤原和博・東京学芸大学客員教授
でも、和田中の学力はこの7年間一貫して上がって、去年ついに杉並区で一番になった。今では、大阪の学校にも塾の講師が当たり前に入っているし、「公教育の崩壊につながる」なんて批判をする人もいなくなった。
もうひとつ、日本人のマインドを変えるために大事なのが、大学生の就職活動。
日本の人気企業ランキングをみると、すっかり保守化してしまって、上位10社に財閥系がずらっと並んでいる。これは、「正解主義」教育の行き着いた果てだと思う。今の時代に、外資系やユニクロ、楽天などベンチャー系の企業が入ってこないのはどうなのか。
アメリカの人気企業ランキングを見ると、上位にアップル、ウォルト・ディズニーが並んで、1位はグーグル。ただ面白いことに、10社の中に、ピース・コープ(アフリカや南米などで英語や技術の指導を行う団体)とティーチ・フォー・アメリカ(学部卒業生を国内各地の学校に2年間教師として派遣する団体)という、2つのNGOが入っている。
ハーバード、スタンフォード、MITの生徒たちが、最初にそういうキャリアを歩もうとするのは日本と大違い。これこそがアメリカの底堅さだと思う。アメリカは本当にしょうもない部分もあるが、多様性という点ではすごい。
まず日本では、三菱商事、トヨタといった人気企業が、クリエイティブで「情報編集力」を駆使した入社試験をやってくれるといい。そして面接では、知識ではなく、「情報編集力」の基盤となる経験とか知恵とか技術を問うようにする。学生側は、自分が突き詰めてきた分野の話をしてもいいし、ボランティア経験を話してもいい。
イギリスでは、私が滞在した20年前の時点ですでに、オックスフォードを卒業しても、すぐに大手企業に就職するのは難しかった。だから学生の多くは、履歴書に書く経験を増やすためにも、たとえば、「2年間国境なき医師団に参加して、アフリカの奥地で難病の人を助ける」といった活動をしていた。日本も絶対そうならざるを得ないと思う。