「正解主義」と「エセ平等」の呪縛から脱却せよ 藤原和博・東京学芸大学客員教授
大震災が起きた今年は、学生にボランティア経験を積ませるチャンス。産業界は、内定の時期を9月以降にずらして、「OB訪問する時間があったら、その代わりに被災地訪問をしなさい」と学生に言えばいい。そうすれば、30万人のパワーが夏の東北に集まることになる。瓦礫の片付けでもなんでもいい。その経験で学んだことを、9月にプレゼンさせて、それを入社試験の代わりにすればいい。
東北から日本の教育を変えてみせる
結局、日本の教育を変えるためにいちばん手っ取り早いのは、具体的な成功例を作ること。そうすれば、日本の空気がガラッと変わる。
だから今、私は東北で和田中と同じことをしようとしている。宮城県石巻市の漁村に雄勝中学校という震災で壊滅した学校がある。そこの佐藤淳一校長と組んで、学校の再生に挑んでいる。そこで豊かな教育をつくってみせる。「漁村だから学力が低いのは当たり前」なんて言わせない。
今、日本の教育は責任者が誰かわからない。責任者がいれば、責任者を叩けばいいが、極端な話、誰が明日から文部科学大臣になっても、日本の教育は変わらない。
敵は、鵺というか、空気みたいなもの。その空気全体を、東北で成功例を作ることで、グッとひっくり返す。これは、いわば詰め将棋みたいなもの。
和田中で始めた取り組みは、今では全国に波及している。「よのなか科」は全国200、300校で実施されているし、「地域本部」(地域住民の学校支援ボランティアなどへの参加をコーディネートする仕組み)も、2500カ所まで広がった。