日本株上昇で最も「得をしている」のは誰なのか 企業が余剰資金を突っ込む株価上昇のカラクリ
PBRが1.0を下回るということは、投資家がその企業に成長力がないと見ていることを物語っている。その理由は以下の通りである。
簿価とは、企業の純資産価値、すなわち資産から他者への負債を差し引いたものである。PBRが1.0倍を下回るということは、企業が解散して負債を返済し、資産を少しずつ売却するだけで、継続企業としての市場価値よりも多くの資金を調達できることを意味する。
こうした中には、単なる業績不振企業もある。また、卓越した技術力を持ちながら、市場の変化によって収益が頭打ちになっている企業もある。
例えば、精密大手ニコンのPBRが1.0倍を下回っているのは、スマートフォンの台頭で2013年に1兆円だった収益が2023年には6280億円に激減しているからだ。ニコンはさまざまな製品で新たな未来を切り開こうとしている。より多角化したキヤノンでさえ、売上高は2006年当時を上回っておらず、PBRは1.0倍を少し上回っている程度だ。
多くの企業が休眠資金をため込み、収益性の高い投資ができないでいる。総資産が負債を上回っているだけでなく、単純な金融資産でさえ負債を上回っている。そこで日本取引所は、余剰資金を自己株買いに回し、株価とPBRを引き上げるよう圧力をかけている。
自己株買いは改革か?
企業が使っていない資金を使わせることは前向きな動きである。しかし、それは最初の一歩に過ぎない。より良い使い道は賃上げだろう。それが十分に行われていない。自己株買いの場合、日本経済全体にとって最も重要なのは、売り手が受け取った現金をどのように投資するかだ。
外国人はほぼ3分の1を保有し、日本株の買い手と売り手の間を行き来している。これは日本経済のためにはなっていない。日本の家計が保有する株式や投資信託は全体の13%に過ぎない。残りの投資家は現金をため込むのか、より成長が見込める企業に投資するのか、海外企業の買収に使うのかーー。すべてはまだわからない。
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