吹き替え声優を諦めたヤギヌマは、アパレルショップで働き始める。
とはいっても、自らが希望する原宿系のアパレルブランドはことごとく面接で落ち、好みとは真逆のベーシックなブランドで働き始める。自身の趣味とは合わない場所での仕事はヤギヌマ自身が言うところの「やりがいがなくつまらない日々」を過ごしていた。
「毎日、服を畳んでは揃えてを繰り返してました。まだアイドルになる前ですね。20~21歳ぐらいの頃。つまらない人生でした」
3年目に差しかかった頃、職場でのトラブルに巻き込まれ、バイトを辞めることとなる。残念ながらアパレルショップでの仕事も自身の好きなブランドで働くことなく、ここでも中途半端に終わってしまう。
職場での人間関係で傷ついたこともあり、バイトを辞めた後は、実家で引きこもることになった。
「実家に引きこもっていましたね。メンタルもやられていたので。そうしたらやっぱり母親は心配するじゃないですか。『そろそろ働いたら?』って。だから言われるのが嫌で、友達の家に避難してたんですよ。そうしたら、その友達が『やることないならアイドルにでもなったら? なんかオーディションいっぱいあるし応募してみなよ』って。今思えば適当ですよね。でも私もやることないし『じゃあ、やろう』って応募しました」
かくしてそんな適当な友達の一言から、ヤギヌマメイのアイドル人生は動き出すことになる。2016年春のことだった。
「契約書もないフリーアイドル」としてのデビュー
応募はしたものの、当然当時のヤギヌマはアイドル、ましてや地下アイドルの存在など知る由もなかった。
そしてオーディションを受けるも、募集していたアイドルグループには不合格。しかし、そのオーディションに落選した子たちでグループを作るというので、それに参加した。
曰く運営っぽい人はいたが、事務所所属ではない。契約書を交わすこともなく皆フリーとして集まっているグループだった。
今も昔も地下アイドルが「闇深い」などと言われるのは大人が関わっているにもかかわらず、契約も結ばずにグループを運営するという、こういった適当なところにあると言わざるを得ないだろう。
だが、引きこもっていたヤギヌマにとってはチャンスであり、その機を逃したくなかった。そうしてアイドルのことを何もわからないまま、ステージデビューすることになる。
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