日本の原発、どこで間違えたのか 内橋克人著 ~原発導入時の安全神話づくりを解明
東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故について書かれた本や雑誌、新聞の縮刷版などが書店の店頭にうずたかく積まれている。
いずれも原発がいかに恐ろしいものであるか、ということを警告しているのだが、日本はなぜそんなに危ない原発をこれほどたくさん造るようになったのか、という大事な点は解明されていない。
著者はかねてから原発批判をしており、福島第一原発などの現地を取材して、会社の技術者はもちろん周囲の住民などの声を聞いて回っている。
こうして1980年代に『週刊現代』に連載したものを『原発への警鐘』としてまとめたが、今回の事故を契機に、「つくられた原発安全神話」という長い序文を書き加えて、復刻新版として刊行したのが本書だ。
日本に原発を導入したのは正力松太郎などの政治家であったが、それを事業として実現していったのは東京電力を始めとする電力会社や機器メーカーであった。
このあたりの事情をわかりやすく解説しているが、同時に原発導入に協力したのが東大教授を始めとする学者やマスコミだったこともよくわかる。
そして原発を受け入れた地元の人たちが「たかりの構造」に巻き込まれたというのであるが、そのカネをバラまいたのは東京電力を始めとする電力会社であった。
その後、原発事故は多発しているのだが、電力会社は「安全神話」を作り出すことによって、これを隠してきた。その結果、今回のような大事故になって東京電力という会社の存立自体が危なくなっている。
それにしても東京電力という会社、その経営者は会社の将来についてなにを考えていたのか、改めて問いたくなる。
うちはし・かつと
1932年生まれ。神戸商科大学卒業。神戸新聞記者を経て67年からフリージャーナリスト、経済評論家に。著書『破綻か再生か』『共生の大地』などで市場原理主義への対抗思潮を展開し、『規制緩和という悪夢』で規制緩和万能論を批判した。
朝日新聞出版 1575円 270ページ
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