日本人の「内向き思考」を批判する人への違和感 「限られた情報」で世界を語ってしまう危うさ

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実際、私はインドで7年間事業を行っていましたが、現地の言葉は一切使わずに英語だけで仕事をしてきました。私の経験上でもインド人の70〜80%は英語を話せました。ただ、あくまでそれは私が仕事をしてきたインド人という、限られた中の人たちということなのです。

私は長くアメリカ留学の専門家として仕事をしてきましたが、アメリカもまた多様性に富んだ国ですよね。だからこそ留学経験者や駐在経験者が語る「アメリカでは」という言葉はあまり信じていません。

なぜなら、それは「テキサスでは」とか「カリフォルニアでは」「ニューヨークでは」という、その人が住んでいたところの地域性にかなり影響されるからです。その経験で、アメリカ全体がそうであるとはまったく言えません。住んでいた時代にもよります。

たとえば、もし30年前に住んでいた人が「アメリカでは」と話したら、それは「当時のアメリカ(のあなたの住んでいた街)ではそうだったんですね」ということになると思うのです。

困るのは、誰も嘘をついているわけではないということです。自分の経験に基づいて知った事実を言っているから、知らない人にしてみたら「なるほど。その国はそうなんですね」と思ってしまいかねないのです。

インド人が初めて日本に訪れて起きた変化

だから今回のテーマである「内向き思考」に関しても、日本人全体がそうなのか、果たして本当にそうなのか、他国の人たちはそうではないのか、そもそも内向き思考は良くないことなのかなど、それぞれの主観がかなり影響するように思っています。

前述したインド人パートナーは、私に出会うまでインドの外に出たことがありませんでした。「インドが大好き、インドはとにかくすごい!」と語り、「日本は経済的にどんどん落ちつつある国だろ?」と言われました。それ自体は間違っていないかもしれませんが、すべて彼がネットで知った情報から判断したことです。

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