不動産の現物市場は過熱し局地バブルも J-REITは利回り低下で再編本格化

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石澤卓志(いしざわ・たかし)●1958年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。日本長期信用銀行、第一勧銀総合研究所などを経て、2001年からみずほ証券。現在、同社企画グループ経営調査部上級研究員。不動産、プロジェクト関連で政府の委員を歴任。著書多数。不動産市況の的確な分析で評価が高い。(撮影:今井康一)

実需目的ではとくに、再開発案件で高額物件が売れている。昨年不動産関係者がびっくりしたのが立川駅前のマンションで、坪単価が348万円だったが完売した。

私はサラリーマンが無理なく買える物件は坪単価240万円までと見ているが、最近はもっと高額な物件も増えているし、売れ行きもよい。ターミナル駅から20キロメートル圏内であれば、資産価値が目減りしないところと見られ、こうした範囲内の需要が盛り上がっている。

不動産市況はこの先2年間は下がらない

投資目的の買いも増えている。今年1月に相続税増税が行われた結果、節税対策としての不動産購入も増えている。実際の価格と税の評価額との差が大きくなるタワーマンションの上層階が売れている。

ニューヨークやロンドンの物件が上昇して、東京の不動産の投資利回りはロンドンよりも高くなったこともあり、外資系ファンドの東京市場への投資が盛んになっている。ただし、アジア系は積極的に購入しているが、以前から不動産を取得している欧米のプレーヤーは円安による価値下落を嫌気して売却もしている。売り買い双方が活発になっている。

――この先2016~17年の不動産市場についてはどう見ていますか。

成長は鈍っても下落まではいかないだろう。2年間はビル供給も多くないし、マクロ経済的にも問題はない。ただその先は下がるかもしれない。金利の動向が重要だが、日本銀行の金融緩和政策はおそらく20年ごろまで続くだろう。金融情勢に大きな変化がなければ不動産マーケットはもつ。もっとも、金利が急上昇するようなことがあれば、かなり危ない状況になるだろう。ただ不動産は個別性が強いので、よい物件であれば暴落時は「買い」だ。

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