「トランプ相手ならバイデン有利」の愚かな発想 米民主党は皮算用にうつつを抜かしている
はっきりさせておくが、大統領ジョー・バイデンのホワイトハウスでドナルド・トランプを応援している者はいない。彼らはトランプを、国家の存亡に関わる脅威とみなしている。だが、共和党の指名候補争いが幕を開け、アイオワ州でトランプが大勝したことで、バイデン陣営の目には2期目への道が映るようにもなっている。
バイデン陣営の見立てでは、トランプとの再戦となった場合、今年秋の大統領選挙でバイデンが勝利する可能性が最も高くなるからだ。世論調査で支持率の低下に苦しんでいるバイデンのアドバイザーたちは、あまりに毒々しく、賛否が真っ二つに割れる人物であるトランプが対戦相手になれば、不満を抱えた民主党支持者や無党派層を再び味方に引き入れる最高に強力なインセンティブになると考えているのである。
トランプよりも手ごわい相手
そうした状況で共和党の指名候補争いが進む中、民主党には若干複雑な思いを抱えている者もいる。そうした民主党関係者には、トランプがサウスカロライナ州の元州知事ニッキー・ヘイリーのようなライバルに打ち負かされたとしても悲しむ者はいない。
民主党からすればヘイリーは多数の欠点を抱えているとはいえ、民主主義に対してトランプのような脅威にはならないはずだ、という考えがそこにはある。
だが、ヘイリーが共和党の大統領候補に指名された場合、バイデンにとってはトランプよりも大きな脅威となる可能性がある。
これは2016年を想起させる矛盾だ。民主党員の多くは当時、トランプが共和党の候補になったことに不安を募らせてはいなかった。人種差別的なアピールや侮蔑的な姿勢の政治活動に特化した傲慢なリアリティー番組のスターが当選することなどあり得ない、という理屈からだった。