中古車グッドスピード「不正会計」の呆れた手口 売上先行計上への経営陣の関与を調査委が認定
営業本部による売上の先行計上が常態化したのはなぜか。
調査報告書では、主要因を「A2氏(専務)において設定した予算(収支計画)を達成することにあったと考えられる」としている。多くの従業員が「GS社の予算の設定は高く、達成には相当な困難が伴う内容であった」と証言しており、調査委は「その内容自体、適正性を欠くものであった可能性は否定できない」と指摘する。
なお、予算を設定していた専務は、「A1氏(社長)からは昨年対比の目標値を達成できないと金融機関との融資の交渉等が難しくなると聞いたことがあり、達成することが必要であった」とも述べている。上から下まで、達成困難な目標により不正が生まれる構図が見て取れる。
売上の先行計上をすると、翌四半期または翌決算期の売上を「先食い」することになる。「一度売上の先行計上を開始すると、継続して予算を達成するためには売上の先行計上を繰り返さなければならない」。まさに負のスパイラルといっていい。
企業会計やガバナンスを専門とする青山学院大学の八田進二名誉教授は、「新規上場企業に見られる、経営者主導型の、非常に古典的な利益水増しだ」「調査報告書も通り一遍のものだ。監査法人がGS社の会計不正にどういう対応をしていたのか、まったく解明されていない」と切り捨てる。同業のIR担当者からは、「あまりに程度が低く、お粗末だ」「監査法人はよく見逃したなと思う」と呆れた声が聞かれる。
不適切な事案はほかにもあった
実は、調査報告書には売上の先行計上以外でも不適切な事案の存在が記載されている。
例えば、GS社の板金塗装を専門に行う「BPセンター」では、当月の目標予算が達成できた場合に、翌月以降への「貯金」として売上の計上時期を遅らせる行為があった。ほかにも顧客が本来GS社に支払う購入代金に一定金額を上乗せして請求する行為についても記載されている。
いずれもアンケートの回答によるものだが、調査対象である「売上の先行計上」ではないため第三者委は深くは追及していない。はっきりしているのは、経営トップから現場までコンプライアンス意識が欠如していた現実である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら