JR「自動運転・隊列走行BRT」公道走行で見えた課題 東広島市で実証実験、信号や割り込みどう対処?

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また、隊列走行の課題は信号以外にもある。今回はバスとバスの車間距離を10mあけた状態で出発し、その後は20mまで広げる。貨物トラックの後続車無人隊列走行の実証実験が高速道路で実施されているが、車間距離は10m程度に抑えている。トラックとトラックの間にほかの車が割り込まないように車間距離を短くする必要があるのだ。

バスについては「トラックと違いバスは客を乗せて走るので、安全のため十分な車間距離を取らざるをえない」(近藤担当課長)。そのため、車間距離が20mの状態でほかの車が割り込んできた場合には隊列走行は解除される。ほかの車の割り込みや信号の問題を避けるためには、バス専用レーンやバス優先信号を導入するしかない。

自動運転 モニター画面
自動運転の状況などを示すモニター画面(記者撮影)

「できるだけ早く社会実装したい」

公道を走行する場合の課題はほかにもある。後続のバスに運転士が乗車しない場合、運賃収受は交通系ICカードで対応できたとしても、現金払いの客をどうするか、車いすの客の乗降をどこまで手伝うかといったことだ。課題は山積だが、東広島市の高垣広徳市長は「できるだけ早く社会実装できるようにしたい」と意気込む。

東広島市自動運転バス実証実験 JR西日本広島支社長 広島大学学長 東広島市長
自動運転バスの前に並んだ関係者。左からJR西日本の広岡研二広島支社長、広島大学の越智光夫学長、東広島市の高垣広徳市長(記者撮影)

既存の道路をバス専用レーンにすると、かえって交通渋滞の悪化につながりかねないが、高垣市長は、「中央分離帯の活用を考えている」と話す。市の担当者に尋ねると、「新交通システム構想でもブールバールの中央分離帯のスペースを活用することが検討されていた」という。

BRTとはBus Rapid Transit(バス高速システム)の略称であり、バス専用レーンやバス優先信号を組み合わせてこれまで以上に早く・時間どおりに目的地に到着できるバスシステムだが、今回はバス優先レーンを設けず信号との連携も見送ったため、BRTとは言い難い部分がある。その意味ではBRTではなく自動運転・隊列走行バスの実証実験ということになる。

しかし、東広島市が将来的に目指しているのは自動運転・隊列走行BRTである。その導入によって、便利で質の高い移動ができるようになるという。中央分離帯をバス専用ルートとして整備するとなればかなりの投資が必要となるが、市にはその覚悟があるということなのだろう。

今年は東広島市が誕生して50周年を迎える節目の年だ。もし自動運転・隊列走行BRTの社会実装に動き出すことが決まれば、50年来の夢の実現に向けた第一歩となる。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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