JR「自動運転・隊列走行BRT」公道走行で見えた課題 東広島市で実証実験、信号や割り込みどう対処?

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西条駅近くの中央公園前バス停を出発し、広島大学で折り返して同バス停に戻る。路線バスと同じルートをたどる1周約12kmの行程だ。JR西日本のテストコースでは連節バス、大型バス、小型バスの3台で隊列走行したが、今回隊列を組むのは連節バスと大型バスの2台のみ。テストコースでの実証実験との違いはほかにもあり、テストコースではGNSS(衛星測位システム)と道路上に一定間隔で埋設した磁気マーカーを使って車両の位置を検知していたが、今回は公道ということもあり、磁気マーカーの埋設はせず車両の位置検知はGNSSのみで行われている。

また、信号との連携もしていない。「西陽が差した場合などに信号の色を100%認識できないケースがあるため灯火認識に加えて信号機から灯火情報をもらうという二重の方法で信号連携を行う必要があるが、そのような実験の実施に向けた協議調整を行うことが今年度は間に合わなかったため、今回は見送った」と、JR西日本でこの事業を担当する近藤創・次世代モビリティ担当課長が話す。

東広島市 JR自動運転バス実証実験ルート
東広島市での自動運転・隊列走行バス実証実験の走行ルート(画像:東広島市・JR西日本)

路駐は手動回避、隊列走行にも課題

1月10日の試乗会が報道陣向けに公開された。報道陣は前方の連節バスに乗る。出発したバスは速度をぐんぐんと上げ、時速40kmで走行する。前方に車が入ってくると速度を落として車間距離を保つ。ルートにはやや勾配がある区間がある。「勾配での発進の際、当初はバスが後退したこともあったが、加速力を調整して後退せず発進できるようにした」(近藤担当課長)。確かに乗り心地はスムーズで手動運転と変わらない。

運転席の様子を観察していると、運転士の手はハンドルの近くにあるがハンドルには手を触れていない。ただ、自動運転区間でも時折、手動操作をしている。手動運転に切り替わるケースはいくつかある。まず、信号と連携していないため信号の手前では手動運転を行う。また、高架下の走行時などGNSSの電波が弱く車両の位置検知に支障がある箇所でも手動運転を行う。さらに、バスは歩道寄りを走るため、車が路上駐車などで路肩に止まっていることがある。「技術的にはさまざまなセンサをつけていけば自動運転で回避することも可能と考えるが、大型バスでそれを目指すと開発などに時間やコストも増えることや、路上駐車はバス専用レーン設置によって解決可能な課題である点を踏まえて、今回の実証実験では手動運転で回避することにした」(近藤担当課長)。

自動運転 ハンドルから手を離した運転士
自動運転区間ではハンドルには手を触れないが、信号の手前や路上駐車の回避などは手動で操作する(記者撮影)

全ルートにおいて隊列走行を行うわけではなく、隊列走行区間は一部に限られている。走行の途中で信号が赤に変わると隊列が途切れる可能性があるため、信号連携を実施していない今年度の実験では、信号がない1.5kmの区間のみを隊列走行することにしたのだという。

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