顔が溶ける病「水がん」患う少女に笑顔が戻った訳 17億人が苦しむ「顧みられない熱帯病」の正体

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サシガメ
英語では”kissing bug”とも呼ばれるサシガメ。夜間に寝ている人の顔などを吸血することで感染する(©Seamus Murphy/VII)

顔が溶けるおそろしい「水がん」

2023年12月、MSFが待ち望んでいたニュースが届いた。水(すい)がんがWHOのNTDsの公式リストに加わったのだ。

口内炎の一種で、細菌感染により顔の組織が破壊され、「溶けた」ようになる水がんは、栄養失調など免疫が低下している子どもに発症しやすい病気だ。適切な時期に治療すれば完治するが、治療が遅れるとわずか数週間で顔の皮膚と骨が破壊され、約90%が死に至る。命が助かっても、顔の変形や痛みにより、差別や生活上の困難に直面することも少なくない。

MSFは2014年からナイジェリアのソコト水がん病院を支援しており、外科チームによる顔の再建手術、栄養や心のケアなどを実施してきた。

ソコト病院を訪れた7歳の水がん患者は、顔の一部が壊疽(えそ)を起こして穴が開いていた。「私の顔、治せる?」と、担当の医師に聞いた少女は、病気にかかって以来、周りの目を恐れて学校にも行けず、外でも遊べなかった。

顔の再建手術により、少女は「また学校で学べるようになる」と喜んだ。水がんの治療は命だけではなく、患者の未来も救うことを意味している。

ソコト水がん病院で顔の再建手術を受けた7歳少女(右)と母親(左)。学校に行くのを楽しみにしている(ⒸFabrice Caterini/Inediz)
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