【産業天気図・パルプ/紙】値上げ効果で次第に収益好転か。ただ原燃料高などの懸念が依然残る

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2006年の紙・板紙需要について日本製紙連合会は前年比0.2%増の3196万トンと予測している。内訳は、紙が0.3%増の1952万トン、板紙が0.2%増の1243万トン。紙は景気回復などを背景に主力の印刷・情報用紙と衛生用紙が過去最高を更新し、04年の1948万トンを超えて記録更新へ。一方、板紙も微増ながら、ピークの1997年(1282万トン)には届かず、紙・板紙合計も2000年の3213万トンには達しない、という。要は、3000万トン水準での内需頭打ち状況が続くという大きな流れに変わりはなさそうだ。
 そうした中で、06年度の製紙メーカーの業績にインパクトを与えそうなのが、2月以降、各社が相次いで表明した洋紙・板紙の値上げだ。05年度は内需こそ紙・板紙計で横ばいだったものの、夏以降に深刻化した原燃料高と円安の影響を製品価格に全く転嫁できず、そのうえ競争激化で市況そのものが軟化するという2重、3重の憂き目に遭い、王子製紙<3861.東証>、日本製紙グループ本社<3893.東証>を始め、主な製紙会社は期初の営業増益予想から一転、減益への修正を余儀なくされた。
 各社、その“痛み”を共有しており、「安値を続ける抜け駆けは出ないだろう」(中堅製紙)など、値上げに向けての足並みはそろっている。値上げが割安な輸入紙の流入に拍車を掛け、自らの首を絞める逆効果のリスクは付いて回るものの、「現在の円安水準では輸入紙も採算割れする」(業界関係者)といい、値上げの環境は整っている模様だ。このため一定の値上げが夏にかけて通ると見られ、各社には大きな収益改善要因となろう。天気で例えれば、06年度上期は徐々に値上げが浸透、下期にかけて本格的に効果が発現して収益好転の「晴れ」となるシナリオか。
 ただ、原油を始めとする原燃料高は06年度も引き続き懸念要因。「値上げ効果を帳消しにされる恐れがある」(製紙大手)との慎重な声も聞かれ、過大な改善期待は禁物だろう。業界の供給能力の観点からも、需給逼迫とまでは言い切れず、もともと値上げが通りにくい構造を持つ。技術的に成熟しているため品質面での差別化が難しい製紙産業は、勢い価格勝負になりがちだ。こうした意味で上記シナリオは、やや楽観的であることも認めざるを得ず、結果として通年「曇天」となる可能性もある点、注意が必要だ。
【内田史信記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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