アップルは「キャッチアップ型」になった?

イノベーションの季節は終わったのか

当時の電機メーカーを取材していた筆者の印象では、彼らがあえて消費者に不利益な提案をしようとしていたわけではない。しかし、消費者視点から見たとき、(著作権者保護の観点から)電機メーカーが古い仕組みを守り、インターネット化の流れを遠ざけようとしているように感じる場面は多かった。

アップルは音楽業界を中心に巻き起こったインターネット革命の中で、その革新的なイメージを強めていった。その後、本格的にブランド力、企業価値を高めていったのは2007年のiPhone発売後のことだが、音楽との接点はアップルにとって重要なものになった。

旧式になったiTunesのビジネスモデル

しかし、今やそのブランド力の源泉ともなっていたiTunesとiTunes Music Store(開始当時の名称)のビジネスモデルも旧式となっている。iTunesで音楽をダウンロードで売り切るビジネスモデルはここ数年、キャッシュフローが伸び悩むどころか減らしてきていた。

その代わりに台頭してきているのがSpotifyに代表される定額で聴き放題となる加入型音楽配信サービスだ。

デジタル世界において、あらゆるメディアのハブとしてパソコン(アップルの場合はMac)が機能していたころならば、音楽をダウンロード販売し、それを使いやすいコンピュータ上で管理して、コンパニオンデバイスであるiPodなどで楽しむというシナリオが美しかった。

しかし今やクラウドの時代。高速通信機能を持つスマートフォンなら、ダイレクトにクラウドのパワーを引き出すことができる。中心点がパソコンからクラウドに移行していたのはずいぶん前の話だ。アップルも、クラウド時代に適合するようiTunes Matchなどのサービスを提供し、iTunes Storeではアーティストを中心としたファンコミュニティの仕組みを組み込むなど、新しい時代に適応できるよう工夫を重ねてきたが、iTunesの強烈なイメージをぬぐうことは難しい。

ヘッドホンメーカーであるbeatsを買収したのも、音楽流通の枠組みに再びイノベーションが起きようとしているこのタイミングで、加入型音楽サービスと連動できるよう音楽関連の機能を一新して、ブランディングもやり直すことにしたためだろう。

新サービスの名称は「Apple Music」であり、beatsのブランドは使っていない。しかし、音楽業界とのつながりという意味でbeatsがアップルの中にあることが重要なのだ。

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