台湾総選挙・支持者獲得では「空中作戦」も発生 台湾選挙のリアル②・既存の選挙戦に自信がない政党

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民衆党と違い、国民党は組織動員では最強の実力を有する。このため、都市近郊や農村といった地域で街頭演説や遊説、集会を行うことで支持者を固め、候補者を当選させる。

林家興は「国民党は地方での支持基盤が固い。地方選挙で遊説、集会といった『陸上作戦』で支持を訴えれば当選は難しいことではない」。

「若い有権者は民衆党に向かっている」との見方に、林家興はこれに同意しない。

「民進党が強いというこの選挙区の特性上、国民党支持者は自分が誰に投票するかをなかなか口にしない。彼らは国民党が安定政権となってこそ、生活もよくなると信じている。これこそ、地方線で国民党が勝利を続けている理由だ」

2018年の地方選挙で吹いた国民党への追い風が、今回の選挙でも続いているか。それを願いつつ、林家興は国民党が今後直面する問題を指摘する。

「時代と人口構造が変化する中で、これまではうまくいっていた陸上作戦が徐々に力をう失っている」。彼は「資源が限られた状況で、若い層を惹きつけようとすれば、ネットによる空中作戦が最も重要だ」。

若者の大部分が、地元以外の大学へ進学・就職しており、従来の地方での組織動員が効果を失いつつある。

今回の選挙戦で、国民党は蔡英文政権の無能ぶりを批判する内容のラップで3分ほどの動画を作成し、「政権交代、民主主義牽制」を訴えた。2024年の最高の選挙広告だと自画自賛し、現在の状況に不満を持つ若い層の感心を惹こうとした。2023年12月23日にユーチューブで公開したこの動画は、2024年1月8日現在1.3万人が視聴している。

現政権について林家興は、「蔡英文はこの数年間、メディアと世論との対話をきちんとやらず、社会からの批判と助言を避けるなど距離を置いた。過去の選挙の際、民進党が訴えた『抗中保台』はこれ以上効果を出せずにいる。われわれも国民が体感していないことを集中的に批判し、国民党は保守、安全、実務主義、そして経験のある政党だと積極的に有権者へ訴えてきた」という。

混戦の「台北市第5選挙区」

「われわれはヒューマニズムと革新的価値を追求する。一般市民とともに努力している。投票日には必ず支持してください」。

民進党立法委員候補の呉沛憶(36)は、こう訴えた。1月6日、台北市第5選挙区(中正、万華地区)で、呉沛憶が遊説していた。蔡英文と民進党副総統候補の蕭美琴が愛猫家と知られているため、呉沛憶は遊説時には猫の手の形をした手袋をつけて、市民に向けて手を振っている。民進党報道官を務めた呉沛憶は、今回は必勝の覚悟だが不安な点もなくはない。

激戦区・台北市第5選挙区で遊説中の民進党候補の吳沛憶氏(写真・吳沛憶氏のフェイスブックより)

「民進党は親中路線を拒否し、アメリカやEU、そして東南アジアなどの世界市場との交流する道を開いた。国民党や民衆党が政権に就けば、台湾はこれまで守ってきた『世界往来』の路線が中断される」と、呉沛憶は今回の選挙戦の意味をアピールする。

台北市第5選挙区は、前回、前々回の選挙で世界的な注目を集めた。国民党がもともと優勢な地区だが、台湾を代表するヘビメタルバンド「閃霊」(Chthonic)のボーカル・林昶佐が「汎革新陣営」の統一候補として出馬し、再選も果たした。しかし、今回の選挙で林昶佐は不出馬を表明し、同じ選挙区の市議会議員である呉沛憶が立候補することになった。

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