日本人が知らないサンマリノ、「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元、ブドウ畑に鳥居が
一方、もう1つの「不思議」である神社の歴史は鉄道に比べてはるかに新しい。その創建はリミニ・サンマリノ鉄道の動態保存区間復活よりも後だ。
お正月といえば「初詣は欠かせない」という人も少なくないだろう。しかし日本から遠く離れた欧州に住む邦人にとって、神社での参拝はなかなか叶わない。そんな中、サンマリノには神社本庁に認められた欧州初の神社が建てられている。
その名も「サンマリノ神社」と称し、2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼し、日本とサンマリノの友好関係を深めるため、2014年に創建された。鎮座式には、神社本庁総長をはじめ、故安倍晋三元首相の実母・洋子さんも参列したという。
ところで「神社がなぜサンマリノにあるのか?」という疑問を持つ人もいることだろう。由来によると、2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある。全ての大使の中でも在職期間が最も長いことから外交序列筆頭の駐日外交団長でもある。ちなみに、神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務める。
ブドウ畑の一角に神社
小さいながらも本殿があり、伊勢神宮と同じ「神明造」の様式を持ち、その一部は伊勢神宮が遷宮の際に用いた木材を使用。日本で組まれたのち、サンマリノに輸送されこの地で再構築されたものだ。
神社はワイン用のブドウ畑の一角に設けられており、鳥居をくぐる際には遠くにサンマリノの象徴である3つの砦を擁したティターノ山の威容を眺めることができる。ただ、この神社の立地はサンマリノ旧市街地から遠く、険しい山道をくねくねと登りながら目指すことになる。クルマがないと行きにくいのが残念だ。とはいえ、欧州の小国にある神社という貴重さは何事にも代えがたい。
欧州大陸にある小国のうち、モナコ公国とリヒテンシュタイン公国は周辺国の鉄道幹線が国の一角を通り抜ける形で敷かれている。一方でサンマリノは岩山が国土という悪条件の下、100年近く前に鉄道で下界と中心地をつなぐ「国際列車」を通すという先見性があったことは忘れてはならない。
正直なところ、日本との縁はあまりなさそうな欧州の小国・サンマリノだが、今世紀に入って、“神社がある国”にもなった。「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい。
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