窮地に立つ任天堂 「Wii U」で見せる執念

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


 「今までの成功体験に倣ってゲームを作るだけだと、こちらが期待するほどお客さんには届かない、ということがすでに起こっている」。岩田社長もそう痛感する。

ファミコンが登場した1983年以前は、微々たる規模だったゲーム市場。ゲーム機が家庭や個人にまで普及したことで、10年には3兆9600億円にまで拡大した(『ファミ通ゲーム白書2011』)。一昔前までは新しいゲーム機を投入するだけで、任天堂は食いつないでいくことができた。しかし現状、単に「新製品」というだけでは、ユーザーは飛びつかなくなっている。

WiiUを現行のWiiより普及させるべく、任天堂は最低でも、二つのハードルを乗り越えなければならない。

一つは、社外の開発者にとって、魅力的なゲーム機になることだ。WiiUの新しい機能がどれほど優れていたとしても、ゲームの命はソフトによってしか宿らない。これまでの実績上、任天堂製のタイトルには十分期待が持てると推測される。あとは外部の有力シリーズや完全新作をどの程度そろえられるかだ。

幸い、Wii投入時よりも、業界内の期待は高い。コントローラの操作感は上級者向けゲームにも対応できるようになった。バンダイナムコホールディングスが累計4000万本以上出荷した格闘ゲーム『鉄拳』は、シリーズ16年目にして初めて任天堂の据置型で展開することを決定。対戦系を得意とするカプコンも、「手元のコントローラ画面を生かしたアクションゲームを作りたい」(辻本春弘社長)と、意欲を見せる。むしろ今後は任天堂のほうから歩み寄り、ソフトメーカーの開発意欲を喚起し続けなければなるまい。

もう一つは、リビングルームにおけるテレビ以上の存在感を、WiiUで発揮できるかどうかだ。ゲームになじみのない人はまだまだ多い。それには従来のゲーム機の枠を超え、初心者から上級者まで取り込んで、人々の生活そのものまで変えるような、ライフスタイルの提案をする必要があるだろう。

“年初来安値”がマーケットの声とすれば、任天堂の描く構想は、まさに夢物語ととらえられているのかもしれない。だが、任天堂はリスクをとることで、大きく化けてきた企業だ。DSの2画面も、風変わりなWiiリモコンも、当初はほとんど評価されなかった。任天堂がもう一度よみがえるかどうか、すべてはWiiUの成否にかかっている。

◆任天堂の業績予想、会社概要はこちら

[+画面クリックで詳細チャートを表示 <会員登録(無料)が必要です>]

(前野裕香 =週刊東洋経済2011年6月25日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事